鳥かご



「オマエ、自分が何言ってるかわかってんの?」
 不機嫌そうに剛が言う。
「わかってるよ」
無理に笑顔を作って答える。
「本当にそう思ってんの?」
 お願い、それ以上言わないで。
「本当にそう思ってる」
 これ以上ここにいたら、私は壊れてしまう。
「どうしても、俺と別れたいって言うんだな?」
 言わないで。
「そうよ」
 もう、つらいから。ここから逃げ出したいから。早く剛から離れないとつらいから。
「さよなら」
 涙が零れる前に剛の前から消えないといけない。
 剛は何も言わない。 ただ、去っていく私の背中に剛の視線が刺さっている。
 お願い、見ないで。

 よく行く居酒屋で、何度か井ノ原くんを見かけて、彼が常連であるのを知ったのが3ヶ月前。
 そんな縁で、井ノ原くんと飲み仲間になったのがその1週間後。
 他のV6のメンバーと初めて一緒に飲んだのは2ヶ月前。
 その時にいたのが、カミセンの3人だった。
 それが、剛との出会い。
 人見知りが激しい剛は、元は全然口をきいてくれなかった。
 けれど、剛は寂しがり屋で甘えん坊だから、仲良くなってからは、メールとか、電話とか頻繁に連絡をとるようになった。
 友達以上恋人未満な関係から、1ヶ月前、恋人同士になった。
 きっかけは、剛の告白。
 嬉しかった。
 幸せだった。

 剛にとっての恋人って何だろうって思うようになった。
 全て剛の都合に会わせないといけなかった。
 剛は、自分勝手。
 私は恋人という名の奴隷じゃない。
 それが、剛の独占欲からきた愛の形だって頭で理解していても、心がついていかない。
 剛は私を小さな檻の中に閉じこめて、鳥かごの中の鳥のように私を愛そうとしているけれど、私はペットになりたくない。

 剛を愛している。
 剛が愛してくれているのもわかる。
 けれど私たちは、愛し方があまりにも違う。
 私は、剛を私の中に閉じこめたりしたくない。自由に生きて欲しいと思う。嫉妬もする、独占したいとも思うけれど、束縛はしたくない。それが私の愛し方。
 剛は私を閉じこめたがる。自分だけのものにしたがる。私がどんなに側にいても満足しない。それが剛の愛し方。
 このままじゃ、私は剛がいないと生きていけなくなる。
 それが怖い。
 剛のこと好きだけど、愛しているけど、全てが剛になってしまうのが怖い。
 もし、剛が私に飽きてしまったら?
 剛がいないと生きていけなくなっていたら、どうなる?
 きっと、死ぬしかない。

 今なら、まだ間に合う。
 剛から逃げ出すことができる。
 涙をこらえて歩く私。
 これでいい。
 まさか、自分が剛をフルなんて思ってもみなかった。
 さよなら。さよなら。さよなら。
 きっと、もう二度と会うことはない。
 大丈夫、時間が剛を忘れさせてくれる。
 ただのファンになれる。
「待てよ」
 剛の声が聞こえた。
 振り向いちゃいけない。足を止めちゃいけない。
 逃げられなくなる。
「待てって言ってるだろ!?」
 剛の声に反応してしまう。
 足が止まってしまう。振り向いてしまう。
 ダメなのに。
 逃げられなくなるのに。
「行くなよ」
 剛が私を抱きしめる。
「どこにも行くなよ。別れるなんて言うなよ」
 お願い、それ以上言わないで。
「愛してる」
 …私も愛してる。
 剛が私を見つめてる。
 捕まってしまった。
 もう、逃げられない。
 キス。
 剛の思いが伝わってくる。痛いくらいに、熱いくらいに。
 涙が溢れてくる。
「泣くなよ、バカ」
 優しい微笑み。
 この顔は私だけのもの。誰にも見せたくない。
 私にもある、独占欲。
「もう、離さないからな」
 悪戯に笑う剛。
 私はもう逃げられない。
 剛に捕まってしまった。
 剛から離れられない。
 私は飼い慣らされた飛べない鳥。
 もう、飛ぶことが出来ないのなら、私を愛して。
 飛べない鳥は、愛が与えられないと死んでしまう。
 剛の愛がないと生きていけない。
 だから、飼い殺して。
 愛されるあまりに、剛がいないと何も出来なくなってしまうくらいにさせて。
 剛の愛で私を殺して。



あとがき
ラブラブなのか、そうでないのか…。
しかし、なぜ私が剛くん書くと酷い人になるんだろう…。
つ、次こそはかわいい剛くんを!!