身長差のない二人



 はっきり言って、私と剛との身長差はない。
 いつも剛と同じ高さの世界が見れてることは、幸せ。
 同じものを見ていたい。
 だけど、私だって女だからたまにはヒールのある靴を履きたいって思う。
 別に剛が履いちゃいけないって言ったわけじゃない。
 でもやっぱり、女の方が背が高いのは格好悪いって思われそうで。
 この前「君を見上げて」のDVD見て余計思った。
 だから、履けないでいる。
 剛は馬鹿馬鹿しいって笑うかもしれない。
 でも、もし。
 もし、嫌がったら?

、コンサート来るだろ?」
 剛は当たり前のように言う。
「あ、うん」
「いつ?」
 剛のこの言葉は「いつなら来れる?」じゃなくて、「いつが来れない?」の意味だったりする。
「大丈夫だよ」
 だから、これは「全部行けるよ」の意味。
 私はまだ学生なんて自由が利く身分に甘んじてるからなんとでもなる。
 卒業したらどうなるかなんて、考えないようにしてる。
 自由に休める職業なんて、あるはずないから。
「じゃあ、席とっとく」
「ありがとう」
 そんな会話をしたのは、一ヵ月前。

 カミコン初日。
 広島は晴れ。
 開演待ちの行列を見て、やっぱりすごいなって思った。
 こんなにたくさんの人に愛されてる三人。
 そのうちの一人が彼氏だなんて、嘘みたい。
 私の知ってる剛は、普通の男でしかないのに。
 ここにいるみんなは、アイドルの剛を見にきてる。
 別人なんじゃないかって思っちゃう。
 だけど、TVの中でもステージの上でも私が見慣れた男がそこにいる。
 だからV6の森田剛は私の彼氏と同じ人物。
 とにかく、今から初公演。
 剛が取ってくれていた席はステージの真横。
 ステージとの距離が会場の中で一番近いのかも。
 5mと離れてない。しかも目線が近い。
 剛はいつも、初公演の時には自分が一番多くファンに会いに行けるポジションを取ってくれる。
 席に座って開演を待つ。
 V6ファンの友達と一緒に来ているから、退屈はしない。
 当たり前だけど、この友達は私と剛の関係なんて知らない。
 知られたら殺されそう。
 まぁ、彼女は健くんファンなんだけど。
ってくじ運いいよね」
 彼女は嬉しそうに笑ってるけど、この席はファンクラブで取ったんじゃないんだよね…。
 私は苦笑するしかない。
「今日は、いつもとちょっと格好違うね」
「まぁ、せっかくのコンサートなんだからお洒落しなきゃでしょ?」
 なんて答える私。
 そう、今日はいつもと少し違う格好をしている。
 赤のチェックスのミニカートにTシャツなんてパンクな格好してみたり。
 さらに、普段なら絶対に履かないヒールの高いブーツ。
 剛と一緒の時には履けなかったブーツ。
 だけど、剛にお洒落した自分を見て欲しくて、履きたかったブーツ。
「そうだね。とっても似合ってるよ」
 彼女の言葉が嬉しい。
 だけど、まだ、ちょっとだけ不安。

「サイコーだったね!剛くんたくさんこっちに来てくれたし!」
 隣で嬉しそうにしている友人に苦笑してしまう。
 剛のことを私は見慣れているから。
 でも、私以外の女の子にとっては、凄く嬉しいことなんだろうな。
 私は、ずっと不安だった。
 なかなか慣れない。
 だって、コンサートの時の剛って、やっぱり別人みたいなんだもん。
「さて、お腹空いたね!」
 私たちは2部の公演の為に再び入場の列に並ぶ前に、ご飯を食べに近くのショッピングセンターに行くことにした。
 会場から出たことだし、携帯の電源を入れようっと。
 取り敢えず、メールと留守電のチェック。
 メールが一通来ていた。
 剛からだ。
「誰から?」
 隣にいる友人が聞いてきた。
 まさか、彼女が今夢中になっているアイドル本人だとは言えない。
「彼氏」
 一応、事実だし。
「ラブラブだねぇ」
 茶化される。
 それもそうだ。
 コンサートの後にはいつも「彼氏」から電話かメールが必ずあるから。
 彼女は私の彼氏を過保護な奴だと思い込んでいる。
 本当は、全然違うんだけど。
 メールを見る。
『どうだった?』
 たった一言。
 まぁ、いつものことだけど。
『良かったよ!サイコーだって友達は言ってる。(笑)』
 すぐに返信しておく。
 遅いと機嫌が悪くなるから。
 それからすぐ、聞き慣れた着メロ。
「電話?」
「うん」
「誰?」
「…彼氏」
「あっついねー」
 友達に呆れられながら電話に出る。
「もしもし」
『お前、変わった格好してたな』
「そ、そうかな?」
 もしかして、気に入らなかった?
『ライブの時でもいつもと変わらなかったくせに』
「ごめん」
 やっぱり、気に入らなかったんだ…。
『なんで謝るんだよ』
「え?」
『いいじゃん、そーゆーのも。今度からそういうので来いよ』
 もしかして。
 もしかして、気に入ってる?
「う、うんっ」
『次、2階正面だよな』
「そうだよ」
『見てろよ?』
「言われなくても見ますって」
『じゃぁな』
「うん」
 勝手に剛が電話を切った。
 友達がこっちを見てる。
「何?」
「いや、すっごく嬉しそうなんだけど何かあった?」
 あ、顔に出てる?
 私の考えてることなんてバレバレなのね…。
「ちょっとね」
 本当のことは言えないし。
「いいも~んだっ!私には剛くんがいるもんっ」
 ごめん、その剛くんが彼氏なんだよ…。
 心が痛む…。
「なに?どうしたのよ、
「な、なんでもないよ!?」
 携帯にメールが届く。
「今度は誰?」
 友達がため息。
 …剛だ。
「また彼氏なの?」
「う、うん」
「早く見てあげたら?」
「ごめんね?」
「いいって!」
 もう!剛!今度は何??
『さっき、言い忘れたんだけど』
 妙に行数があいてて、スクロールさせる。
『愛してる』
 ココには、沢山女の子がいて。
 カミセンファンがいて。
 剛のファンがいて。
 でも、この言葉は。
 この言葉は私だけに向けられていて。
 嬉しいよ。
『私も愛してる』
 返信して、嬉しくなった。
!早く行かないとご飯食べる時間無くなるよ?」
 いつのまにか先に行っていた友達が呼ぶ。
「あ!うん!」

 カミコンは、始まったばかり。
 今日もまだ2部がある。
 身長差なんて関係なくて、剛は私の服装気に入ってくれた。
 気にしてたのは私だけ。
 バカだよね。
 これからも、ついて行くから。
 見捨てないでやってね?
 愛してるよ、剛。



あとがき
ええと、嵐の「身長差のない恋人」とは関係ないです。
単に自分が普通に剛君と身長差がないだけです。はい。
っていうか、カミコン初日の話を新年明けてからUPって…。
何ヶ月前だよ。3ヶ月?ありゃぁ。ゴメンナサイ。(汗)