マチボウケ



 遅い。
 完全に待ち惚け。
 まさか、だまされた?
 時間も、待ち合わせ場所も間違ってないし。
 向うから「会おう」って言ったくせに。
 信じらんない。
 約束、一時間すぎてるし。
 私ってば人がいいから「ちょっと遅れるかも」なんて言葉信じて。
 ちょっとどころじゃないし。
 いつになったら来るわけ?
 それとも、やっぱり来ない?
 だまされたかなぁ、私。
 簡単に近付ける相手じゃないものね。
 芸能人だし。
 アイドルだし。
 ジャニーズだし。
 V6だし。
 相手は、森田剛だし。
 っていうか、よく考えてみたら、相手が本物なのかも分かんない。
 会うの、はじめてだし。
 なんでメル友やってんだっけ?
 あ、そうだ。
 友達の彼氏に紹介されたんだ。
 仲間内で集まって、ドンチャン騒いだ時。
 じゃなくて。
 紹介すらされてないや。
 何かの罰ゲーム。
 他人の携帯からランダムに相手を選んでかける。
 負けたのは友達の彼氏で。
 酔ってテンション高い私が電話をかけた。
 相手は「モモ」。
 絶対女だと思ったんだもん。
 だけど、それは犬の名前で。
 忘れてた。
 友達の彼氏、犬好きだって。
 あんまり覚えてないけど、すっごいアイツの不機嫌な声がかえってきて。
 女かと思ってかけたって言ったら、人が変わったみたいに笑って。
 それから、携帯は持ち主に奪われて。
 その場はそれで終わったんだけど。
 何日か経って、アイツからメールがきた。
 うん。
 それからメル友だ。
 一応電話で話したことあるけど、酔ってたから。
 本物の森田剛なのか分かんないし。
 つーか、遅れるなら、もしキャンセルだとしても、連絡くらいくれてもいいんじゃない?
 もう、限界。
 いつまでも待ってらんないわよ。
《来ないみたいだから帰る》
 メールを打った。
 送ってすぐ、着信。
 森田剛。
 そっか。
 一応電話番号も交換してるんだっけ。
「もしもし?」
 思い切り不機嫌な声ででる私。
『オマエ、どこにいんだよ?』
 すこし苦しそうな声がかえってきた。
 辺りを見渡す。
 携帯で話してる人はたくさんいる。
 たくさんいるのに、私の視線が一人の男にとまる。
 いた。
 森田剛。
 目が合う。
 ゆっくりと、近づいてくる。
 汗。
 少し荒い息。
 きっと、走ってきたんだろう。
「帰るなんて言うなよ」
 初めて聞く、肉声。
「本物だ」
 驚いて。
 信じてなかったわけじゃない。
 友達の彼氏の紹介なんだから、嘘つくわけないし。
 だけど、現実味ないじゃない。
、会いたかった」
 分かってる。
 誘ったのはあなただもの。
 なのに、その言葉がすごく嬉しい。
「遅くなってゴメン」
 首を横にふる。
「来てくれたから、いい」
「ありがとう」
 笑顔。
 ヤバイ。
 今の顔、きっと、一生、忘れられない。
 一目惚れ、したかも。
 テレビとか雑誌とかで、何度もみたことあるけど。
 メル友だけど。
 会ったのは、初めてだもの。
「なぁ、。取り敢えず、どっか移動しようぜ」
「うん」
 もう、離れらんない。
 なぜだろう。
 この人のことが、すっごく好き。
 そりゃ、メールやりとりしてて、おもしろい奴だとは思ってたけど。
 そんな次元じゃない。
 恋だ。
、ここでいい?」
「え?」
 目の前に、レストラン。
「ダメなのかよ?」
 この人、少しイラだってる?
「そ、そんなことないよっ」
 慌てて答えて。
「そっか。なら、いこうぜ」
 あ…。
 手。
 繋いだ。
「どうした?」
 何でもないみたいに、振り返って。
「別に」
「何だよそれ」
 そういって、また、犯罪的な笑顔。
  森田剛、強者かも。
「行くぞ」
 なんだか、私のメル友とはイメージが違う店。
 もっと、違うところが好きそうなんだけど。
 しっくりこない。
 死角になるような、奥の席に案内してもらって。
 それから、彼にメニューを手渡してボーイが去っていく。
 で、それを私に渡してきた。
「好きなもん、頼めよ」
 言い放つ。
 ね、やっぱり言動が店に似合わない。
「何が美味しいの?」
 はじめてきたお店だし、こういうところ、殆ど行かないからわからなくて聞いてみる。
「知るかよ」
 そっぽを向く。
「…知らない?」
 疑わしげに彼を見ると、ばつが悪そうに見上げてくる。
 ちょっと、その顔!
 ドキドキしちゃうんですけど。
「教えてもらったんだよ、ココ美味いって」
「教えてもらった?」
「…長野くんに」
 あ。
「そっかぁ。そうなんだ」
 だから、全然似合わないんだ。
 やっぱ、この人の趣味じゃないんだ。
 なんか、安心した。
「いいから、決めろよ」
「そうだね。ドリアにしようかな。チキンドリア」
「分かった」
 キョロキョロした後に、ボーイ見つけて呼んで。
 やっぱ、慣れてないんだ。
 カワイイって思っちゃった。
 そんなこと言ったら、怒るかな?
「俺さ」
 突然話しだすし。
「すっげーに会ってみたくてさ。おもしれー奴なんだろうなーって」
 思わず睨んでしまった。
「何それ?」
「だってさ、いきなり友達から電話があったと思ったら、女の声だぜ」
「罰ゲームだったのよ」
「知ってる」
 不適に笑ってみせる彼。
「でもさ、会って良かったと思ってんだ」
「本当に?」
「メールしてるだけでも、アレだったんだけど、会ったらアレだし」
「アレって何?」
 訊いた途端、目を逸らしてしまった。
「なんでもねー」
「ま、いいけど」
 メールでも、こういう反応の時は絶対答えてくれなかったもの。
「いいんだよ。そのうちわかるから」
「そのうち分かる?」
 余計気になるじゃない。
「まぁ、そのうち、な」
 ニヤって笑って。
 ふと気づく。
 そのうちってことは、またってことで。
 今日だけじゃなくて、これからもあるってことだ。
 そうだよね?
「どうした?」
 あ、私黙り込んでた。
「ん?別に」
 きっと、この人には分かんないよ。
 私が今、どんなに嬉しいか。
「んだよ、言えよ」
「そのうち、ね」
「はぁ?今言えっつーの」
「自分だって「そのうち」って言ったじゃない」
「俺はいーんだよ」
 俺様論。
 でも、好き。
 すごく好き。
 どんどん好きになってる。
 待ち惚けさせられ、怒ってた私はどこに!?(笑)
 とりあえず、
「これからヨロシク」
 ってことで♪



あとがき
ええと、なんか途中まではかいてて放置してました。
あまりに更新してないので苦し紛れに終わらせて。(コラ