ナカナオリ。



 いつも喧嘩ばかりしてる二人。
 それが当たり前で、それも愛だと思ってる。
 だって、自分の思っていることを我慢するのって、何かが違うと思うし。
 剛と意見が合わなくても、私は私だし、剛は剛だからそれでいいと思うの。
 ダメなら一緒にいられないじゃない。
 ただ、相手のことを知って変わることはあると思うの。
 私、剛と付き合うようになって結構変わったもの。  剛も少し変わったと思うし。
 喧嘩しても仲直りすればいい。
 ずっとそう思っていたし、今だって思ってる。
 なのに。
 何故だろう。
 仲直りが出来ないでいる。
 もう、何がきっかけだったかもわからなくなってきている。
 なんで剛と喧嘩したんだっけ?
 いつの間にか、ただの意地の張り合い。
 どっちかが折れればいいんだろうけど、二人とも意地っ張りなんだよね。
 まともに会話をしないまま三週間。
 ヤバイ気がする。
 このまま放っておいたら、自然消滅なんてことにもなりそう。
 剛のことは好き。
 だけど。
 きっかけが欲しい。
 仲直りのきっかけ。
 それがなきゃ、本当に終わってしまいそうで。
 そんなの、嫌だよ。
 どうしよう?
 どうしたらいいんだろうね、剛……。

 携帯にメールの着信。
 井ノ原くんから。
『今からみんなでゴハンなんだけど、ちゃんも来ない?』
 きっかけが、現れた。
『行く』
 すぐに返信した。  剛に会えるかもしれない。
 井ノ原くんが誘ってくれてる時点で、剛が一緒の確率は90%以上。
 会えば何とかなる気がする。
 仲直りできるかもしれない。

 井ノ原くんの教えてくれた所にタクシーで向かった。
 某有名焼肉店。
 着くと、すでにみんながいた。
「お、いらっしゃい。何?剛が誘ったの?」
 長野くんが迎えてくれた。
「違う違う。俺が誘ったんだって。剛ちゃんを喜ばせてあげようと思ってーv」
 井ノ原君がにっこり笑う。
「良かったじゃん、剛くん」
 岡田くんが剛に声をかける。
 剛の顔はくもっている。
 ……どうしよう。
「剛、ここのとろ機嫌悪かったからさぁ。きっと忙しくてちゃんに会ってないんだろうと思ったわけよ」
 井ノ原くんが、私を剛の横に座らせてくれる。
「……久しぶり」
 勇気を振り絞って、声をかけた。
 でも、剛は私を一瞥しただけで。
 一瞬の視線だけ。
「んだよ、どうした?」
 坂本くんが不思議そうに私たちを見ている。
「喧嘩でもしたの?」
 三宅くんの質問に言葉が詰まる。
 何も言えない。
 剛も、何も言わない。
「ビンゴか」
 岡田くんがため息をつく。
「何で喧嘩したんだよ?」
 坂本くんが剛に訊ねた。
 だけど、剛はそっぽを向いてしまう
 何も喋らない。
「ごめん」
 小さく呟いた。
「私、来ない方が良かったよね」
 私と剛の問題なのに。
 他の五人には関係ないのに。
 みんな、さっきまで笑っていたのに。
 私たちを心配そうに見ている。
 立ち上がって出て行こうとした。
 そしたら。
 腕を掴まれた。
 誰に?
 剛に。
 なんで?
「帰んなよ」
 え?
 今のは、剛の声だよね……?
「ここにいろ」
 一言だけ。
 剛は手を離して、何事もなかったかのように肉を食べ始めた。
「ここにいて、いいの?」
 私の言葉に剛の返事はない。
「いいんだよ」
 代わりに、長野くんが答えてくれた。
「よし、食おう!」
 井ノ原くんが明るく言う。
「ほら、ちゃん席ついて」
 三宅くんが笑ってくれた。
 再び椅子に座る。
 横から無言で、焼けた肉が皿に置かれた。
「ありがとう」
「おう」
 こっちを見なかったけど、剛は返事をしてくれた。

 剛とはあまり会話がなかったけど、楽しく過ごせた。
 焼き肉も美味しかった。
 みんな散り散りになって。
 残った二人。
 私と剛。
 ちゃんと仲直りしてない。
 このまま別れたら、また会えなくなるのかもしれない。
 ちゃんと話さなきゃって思う。
 なのに。
 剛はタクシーを止めた。
 帰ってしまう。
 どうしよう。
「あのっ」
 どうしようもなくて、ただ焦って声だけ出して。
 言葉が続かなかった。
「乗れよ」
 え?
 どういう意味?
 とっとと帰れってこと?
 剛が私のためにタクシーを止める?
 そんなことする?
「乗れよ」
 繰り返される言葉に従い、タクシーに乗った。
 その言葉の本意が分からないまま。
 そしたら。
 剛も乗ってきた。

 着いたのは、私の部屋。
 なぜか、当たり前のように剛もいっしょに。
 久々に剛と二人きり。
 同じ空間に存在している。
 懐かしい。
 懐かしいのに、ずっと前から一緒にいるみたいな。
 ほっとする。
「ねぇ、剛」
「ん?」
 剛がちゃんと私を見た。
「一緒にいようね」
 ずっと、ずっと。
と一緒……悪くないな」
 ニカっと笑う剛。
 この表情が好き。
 この声が好き。
 剛が好き。
 きっとまた、喧嘩するけど。
 そしたらちゃんと仲直りしよう。
 だから。
 これからも、ずっとずっと一緒にいようね。



あとがき
最初の方だけ「クスリバコ。」というタイトルで赤西仁ネタだったという。
でも、何を書きたかったのか覚えてないので、再利用で剛くんに。
久々に剛くん書きました。