やさしいキスをして
部屋に入ってきた剛はキレていた。
「ふざけんなよっ!何で俺が!!」
一体何に対してキレているのか分からない。
だけど、きっと仕事で何かあったんだろう。
「信じられねーよ!ありえねぇ!」
怒鳴り散らす剛。
今、ここにいない誰かに対してキレてる。
何があったんだろう。
私には分からない。
「ちくしょう!ちくしょう!」
ソファーに座って、剛はクッションを殴りつけている。
よほどのことがあったんだと思う。
剛がこんなに荒れることなんてほとんどないから。
キレている剛の横に座る。
そっと、抱きしめる。
剛は驚いたみたいで、身体を震わせる。
暫く黙ったままで。
だけど、少し経って。
私の胸で泣き始めた。
初めは静かに。
だんだん、声を出して。
最後には子供みたいに泣きじゃくった。
きっと、何か仕事で悔しいことがあったんだと思う。
抱き返す剛の腕の力が強くて、少し痛い。
壁に当たったんだろう。
自分だけの力じゃどうにもならない何か。
どうしようもなくて。
理不尽なもの。
だけど、そんなのをおくびにも出さず、仕事はこなしてきたんだろう。
ここまで我慢してきたんだろう。
剛の腕の力が次第に弱くなっていった。
気づけば、剛はいつの間にか泣き疲れて寝てしまっていた。
今日はこのまま、剛を寝かせてあげよう。
明日には全て嫌なことを忘れていられるように。
そう願って。
腕の中の剛を、そっと横たわらせる。
クッションを枕にして。
毛布を取ってきて、剛にかける。
健やかに、眠れるように。
眉間に皺を寄せて、剛は目を閉じている。
だけど、その瞼は赤くはれている。
なんだか、その姿が愛しくて。
閉じた瞳に、くちづけ。
あとがき
一年位前に走り書きしたメモを発見!
流れのみが書いてあるものをなんとか形にしてみました。
ま、結局流れだけの話になってるけどねw