ハッピーバースデー



 今日は私の誕生日。
 ひとりぼっちの誕生日。
 恋人がいない訳じゃない。
 恋人は、いる。
 世界一素敵な恋人。
 だけど、彼には会えそうにない。
 彼のお仕事が忙しいから。
 博はアイドルだから。
 仕方ないんだ。
 本当は会いたい。
 だけど、仕方ないじゃない。
 アイドルの博も、私は好きだもの。
 それに、博はちゃんと私の誕生日を覚えてくれていたし。
 今朝、彼から「おめでとう」ってメールが来てた。
 嬉しかった。
 今日のスケジュール、教えてくれた。
 忙しいんだって、よく分かった。
 彼は「ごめん」って言ってくれた。
 私は「いいんだよ」って言うしかなくて。
 それに、「誕生日を覚えていてくれただけでも嬉しい」って思えたから。
 素直に、そう伝えた。
 それから、博は仕事が忙しいから、返信も出来なくて。
 あと、5分もしたら今日が終わる。
 私の誕生日が終わる。
 きっと、彼はまだ仕事をしているんだろう。
 私は、目の前にショートケーキ1個置いていて。
 食べられずに見つめていた。
 一人で食べる気にはなれなくて。
 携帯を見つめていた。
 来るはずがない博からの連絡を待っていた。
 彼が仕事だってこと、分かってたけど。
 待っていた。
 鳴った。
 鳴らないと思っていた携帯が。
 着信。
 相手は博。
「もしもし?」
「もしもし??」
 愛しい人の声。
「お誕生日おめでとう」
「うん。ありがとう」
  嬉しくて。
「メールでも送ったけどさ、今日、仕事が忙しくて…」
 申し訳なさそうに博が言う。
「うん。分かってる」
 出来るだけ明るく言おうとしたけど、うまくいかない。
「さっき、やっと仕事が終わったんだ」
「そっか」
「急いでそっちに向かってるんだけど、間に合うか分からなくて」
「え?」
 こっちに向かってる?
 博が、ここに来る?
「本当は、会って「おめでとう」って言いたいんだけど、間に合わないと嫌だから電話したんだ」
 嬉しい。
 凄く、嬉しい。
「ありがとう」
「プレゼントもちゃんと用意したんだけど、渡せないと意味ないよね」
 プレゼント、用意してくれたの?
「普通の幸せ、なかなかあげられなくてごめんね」
「ううん。いいよ。博がいてくれるだけでいいよ」
「でも、よかった。ちゃんとプレゼント渡せそうで」
「え?」
「「」」
 私を呼ぶ声が、耳元と背後から聞こえた。
 振り返ると、そこに博がいた。
「誕生日おめでとう、
 微笑んでくれる。
「どう、して?」
「ん?合い鍵使って」
 そう言って、博は最高の笑顔で私を抱きしめてくれた。
「ひろしぃ」
 自然と涙が溢れてきて。
「会いたかった。会えて良かった。今日はあと2分くらいしかないけど、大切なの生まれた日を一緒に過ごしたかったんだ」
 たった2分程度の2人で過ごす私の誕生日。
 今までの寂しかった時間を吹き飛ばすくらい、嬉しくて。
 一緒にいてくれてありがとう。


あとがき
自分の誕生日ってことで、誕生日ネタ。
博に「おめでとう」って言われたかったんです。