今でも、あなたを




 ねぇ、博。
 今でもあなたのことが好きって言ったら、信じる?
「わけわかんねー女」
 私のことを、そう形容したのは剛。
 出会いは、突然やってきた。
 あの頃の私は、ただただ平凡な一ファンで。
 昌行のことが好きでたまらなかった。
 偶然に偶然が重なって、私は昌行に会えることになった。
 それは遠縁の結婚式で久々に顔を会わせた親戚のおかげで。
 前に会ったのは誰かの葬式だったか。
 比較的歳が近い彼は大学を卒業して就職していた。
 前に会ったときから数年経っているから当たり前か。
 彼がしていた仕事、それが問題だった。
 マネージャー。
 しかも、V6の。
 こんな嬉しい偶然なんてない。
 彼は、前から私がV6のファンだったことを覚えていた。
「会わせてやるよ」
 一言、夢のようなことを囁いた。
 その日、携帯の番号を交換して別れた。
 冗談かと思っていたら、彼は日程の調整の為にちょくちょく電話をかけてくるようになった。
 騙されてるんじゃないかって思ったことがなかったわけじゃない。
 でも、本当に会わせてくれた。
 彼から伝えられたレストランに行くと、個室に通された。
 そこにV6のメンバーがいた。
 信じられなくて、嬉しくて、泣きだしてしまった。
 そこに昌行はいなかった。
 仕事の都合がつかなかったと彼は言ってたっけ。
 だけど、本当は違った。
 昌行が教えてくれた。
 あの時、みんなは彼の為に集まってくれてたんだって。
 何度かしか、しかも数年越しにしか会ったことのない私が気に入っていたらしく、私の意識が昌行にいっちゃうことを避けたらしい。
 確かに、私は昌行に惚れたりしなかった。
 私にとって昌行は、あくまでアイドルだったから。
 今は違うけど。
 昌行じゃなくて、泣いてしまった私に優しくしてくれた博が気になりはじめてしまった。
 彼はV6は昌行だけじゃなくて他の5人も十分すぎる程魅力的だってこと、忘れてたみたい。
 その日は、夢みたいだった。
 社交辞令みたいに携帯の番号を交換したよね。
 一応みんなにありがとうってメールして、寝たんだ。
 朝起きたら全員から返信きてて驚いたんだっけ。
 あれから、博とイノッチと健ちゃんがメル友みたいになって、だんだん一緒に遊ぶようになって。
 昌行とも会った。
 ずっと昌行だけには会ったことなくて、めずらしく博とイノッチと剛と遊んだ時に昌行をつれてきてくれたんだよね。
 さんざん他のメンバーと会って遊んで普通の友達みたいに接してた私が、皆に初めて会ったときみたいなリアクションだったから剛に「変な女」扱いされたんだ。
 あの時、博は昌行に嫉妬してたって言ってくれたよね。
 嬉しかったよ。
 私とV6を出会わせてくれた親戚のお兄さんは所属が変わって会わなくなった。
 そしたら、博が告白してくれた。
 皆に出会えた時より、現実だと思えなかった。
 ずっと、友達みたいにしてて、絶対報われない恋だって思ってたから。
 私、どこにでもいるような女だし。
 男の人と付き合ったこともなかったんだもん。
 告白されたのも当然初めてて、どうしていいのか分からなかった。
 やっと頷いた私に博は喜んでくれたよね。
 それから、博と恋人同士になって、私の家に博がいることが多くなって。
 喧嘩もしなかったね。
 だけど、私の家によくいたのは博だけじゃなかった。
 他のメンバーも時々遊びに来てたんだ。
 とくに、昌行。
 昌行は博のこと、一番よく知ってたから。
 結構相談にのってもらってたんだ。
 昌行は家に来て私が録画してるの知ってるから、皆の番組をよくチェックしてた。
 あと、他のメンバーもそうだけど、ご飯食べに来てた。
 博がいつ来てもいいように、冷蔵庫には食材があったからね。
 やましいことなんて、何もなかったんだよ。
 雑誌が平気で嘘を書いちゃう事、博なら分かってるよね?
 私、昌行の恋人じゃないよ。
 いいわけにしか聞こえないだろうけど。
 あの日から、家には誰も来なくなったよ。
 博にも、昌行にも、電話する勇気なくて。
 二人からは当然かかってこないし。
 写真とられたりって、相手が芸能人のときだけだって思ってた。
 けど、私みたいな普通の女にも反応するんだね。
 みんなよく遊びに来てたし、私も遊びにいってたし、関係ないって思ってた。
 博は恋人だから少しは気を付けてだんだ、私。
 結局、雑誌に載ったのは昌行で。
 私の家に入るとこ。
 もっと、ちゃんと、考えてればよかったね。
 みんなにいっぱいいっぱい迷惑かけちゃったね。
 ごめんなさい。
 もう、迷惑かけないから。
 このまま、全部夢にしちゃうのが一番かなって思ってる。
 ただ、私のせいで二人の関係が悪くなってたら嫌だなって思ったの。
 なんて、図々しい女の都合のいいバカな妄想なのかもしれないけど。
 最後に私が送ったメール、覚えてる?
 タイトルは「さよなら」で。
 中、見ないで消しちゃったかな?
 見たくなんかなかったかっだろうし。
 ただ、私が書いた「今まで、ありがとう」っていう言葉に嘘はなかったの。
 博が好きで、大好きで、愛してた。
 本当は、離れたくなくて、ずっと一緒にいたくて、どんな言い訳してでも、嘘ついてでも、傍にいたかった。
 だけど、夢は夢で、私は現実に帰らなくちゃって思ったから。
 それが一番なんだって思い込もうとしてた。
 だけど、忘れたりできなくて。
 夢みたいだったけど、確かに現実だったんだから。
 博を愛してた気持ちも、未だ愛してる気持ちも。
 全部、全部、本当。
 もう、二度と会えないかもしれないけど、会ってくれないだろうけど、愛してる。
 嘘つきで、馬鹿な女だけど、これは本当だから。
 気持ちだけ、伝えたかった。
 この手紙、読まずに捨てちゃうかもしれないけど。
 それはそれでいいんだ。
 それが博の答えで、優しい博をそうさせるのは私だから。
 ありがとう。
 さようなら。
 愛してます。



あとがき
書き終わってみたら暗くてどうしようもなかったりしました。
せっかく死にかけながらもかいていたのでUP。
温かい目で見てやってくだせぇ。(爆)