旅立ち



「俺はここにおるから、いつでも帰っておいで」
 准一は旅立つ の背中に向かって呟いた。

「私、イギリスの支社に行くことになったの」
  が突然、そんなことを行ったのは1ヶ月前。
 2人とも、いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた。
「いつ?」
 准一は大して驚いた様子もなく言った。
「1ヶ月後」
「そか」
「うん」
 ホテルの部屋の窓の外には、黒い星空と陰を帯びたネオン。
 空には尖った月が浮かんでいた。
「ってことは、昇進?おめでとう」
「あ…うん。アリガト」
「スゲーよな。バリバリのキャリアウーマンってやつ?」
「そういうこと、言わないでよ」
「でも、よかったな。 の夢に確実に近づいていってるじゃん」
 准一は微笑んだ。
「これで…お別れだね」
  は思い出したように言った。
 准一は何も言わない。
 2人の関係は恋人では無かった。
 いつも、何となく会いたくなって、なんとなく会っていた。
 微妙な関係。
 好きとか嫌いとか、そういう感情はなくて、一緒にいた誰かであっただけ。
 互いを求めていたわけじゃない。
 一人でいたくないときに、一緒にいただけ。
 会う場所も、時間も、毎回違った。
 けれど、そこには安心できる何かがあった。
 安らげる場所。
 それが2人の関係だったのかもしれない。
「ねぇ、見送りに来てくれる?」
「ええよ。仕事がなかったからやけど」
「准一、忙しいもんね」
「そんなことあらへん。もっと忙しいメンバーもおるし」
 イイながら准一は携帯を手に取った。
「いつ旅立つん?スケジュール確認してみるわ」
「来月の15日」
「わかった」
 准一はマネージャーに電話をかけた。
「あんな、来月の15日って何か仕事はいっとる?」
  はじっと准一を見ていた。
「ん?俺の大切な友達がイギリスに旅立つちゅーから見送りがしたいねん」
 准一はの 視線に気づいて視線を の方に向ける。
「そか。それなら15日はオフにしてもろうてええ?」
 それから何度か相づちをうって、准一は電話を切った。
「どうしたん?なんでそんなに俺を見とるん?」
 そう言われて は少し寂しげに笑った。
「もう、お別れなんだなぁって思って」
 言いながら、准一に笑いかけた。
「ちょっと、ホームシックになりそうな予感?(笑)」
「何言いよるん?前に進まな。 の夢やろ?」
「うん。分かってるよ」
 力強い目で は返事をした。
「見送り、行くから」
「ありがとう」

 旅立ちの日。
「じゃぁね」
  は准一に言った。
 騒音の絶えないロビーで、准一は を見送る。
「頑張ってこいよ」
 准一は笑顔で言った。
「うん。頑張る」
  も笑顔で答える。
 そして、准一に背中を向ける。
 もう、振り返らない。
 准一は、安らげる場所を日本に置いたまま異国へ一人で旅立つ を見送る。
「無理はしたらあかんで?」
 准一の声が に届いたかは分からない。
 一度も振り返らずに は夢に向かって進んでいった。
 准一はその背中が見えなくなるまで、見送っていた。



あとがき
また、ワケの分からないモノを書いてしまいました…。
何が言いたいのか分かりません。ごめんなさいっ!!!