留守電



「愛してる」
 テレビから聞こえてきた声。
 私には決して言ってくれないのに。
 分かってるよ、台詞だから言ってるってことくらい。
 だけど、不安になるじゃない。
 あなたは忙しくてなかなか会えないし。
 あなたはアイドルだから、余計不安になるじゃない。
 平凡に生きてきた私があなたに愛されてれるのか不安になるじゃない。
 たまには聞かせてよ。
 言ってよ。
 不安で不安でたまらないから。
 あなたを愛してる。
 一方的な思いじゃないって、言い聞かせてる。
 このままじゃ、ダメになってしまいそうなの。
 あなたを信じられなくなりそうなの。
 信じたいの。
 不安なの。
 ねぇ、お願い。
 一言だけでいいから。
 それだけで信じられるから。
 聞きたいよ。
 あなたの声が、聞きたい。

『…元気?』
 久しぶりにかかってきた電話。
 だけど私は気付かなかった。
 あなたからの電話に気付けなかった。
 留守電に残っているあなたの声を聞いただけで涙が出そう。
『連絡、なかなか取れなくてごめん』
 本当に申し訳なさそうな声に、胸が締め付けられそう。
 あなたも辛かったの?
 同じ気持ちだったの?
 寂しかったのは私だけじゃなかったんだって思える。
 それだけで、救われる。
『また、当分会えそうにないんだ…』
 やっぱり。
 予想はしてたよ。
 だけど、現実になると結構ショックを受けるものなんだね。
『ごめんな?』
 仕方ないよ。
 忙しいこと、ちゃんと分かってるよ。
 謝らなくていいよ。
 私がほしいのは、そんな言葉じゃないの。
『じゃあ、また』
 それだけなんだ。
 やっぱり、私が一番ほしい言葉はくれないんだ。
 私のほしい言葉を言うような人じゃないこと、分かってるはずなのに。
 会えないから、ほしくてたまらない。
 わがままだって、わかってるけど。
『…あと』
 何?
 何かを言うのをためらってる?
 どうして?
『…』
 どうして何も言わないの?
 何かあったの?
 ねぇ、どうしたの?
『あ…』
 あ?
『いや、やっぱいいや』
 何を?
『次に会ったときに言…えないか』
 分かんない。
 分かんないよ。
 何が言いたいのか、全然分かんないよ。
『…愛してる』
 留守電が、切れた。
 留守電が、切れた。
 ねぇ。
 最後になんて言った?
 あなたは、なんて言った?
 手が、震えてる。
 ありえないって、思ってた。
 ありえないって思ってたの。
 うれしい。
 うれしいよ。
 愛してる。
 愛してる。
 私も愛してる。
 あなたのことを愛してる。
 涙、止まらない。
 涙か止まらないよ。
 みっともないってあなたは笑うかもしれないけど。
 うれしいから。
 今は、泣かせて。
 子供みたいに。
 声をあげて泣いてもいいでしょ?
 今だけ。
 今だけでいいから。
 今だけは、泣かせて。
 お願い。
 この幸せを、噛み締めていたいから。



あとがき
准一さんに「あいしてる」って言われたら壊れます。
ね!一郎君☆(誰に同意求めてんだよ)