雨の日のデート



 朝、晴れてた。
 それは間違いない。
 なのに、スタジオを出たら雨だった。
「…なんでやねん」
 小さく呟く。
 こういう時、神様は意地悪だと思ってしまう。
 天気予報を見なかった俺が悪いんだろうけど。
 傘がない。
 とこれからデートだから、マネージャーも先に帰してしまった。
 待ち合わせ場所まで走れば五分くらいだろう。
 …走るか?
 でも、俺が濡れていったら心配性のがなんていうか。
 せっかく久しぶりのデートだっていうのに、帰りたがるかもしれない。
 俺が風邪を引いたら大変だって言って。
 あ!そうだ。
 傘、買えばいいんだ。
 コンビニに行けば売ってるよ。
 気付くの遅っ!
 有り難いことに、スタジオの隣にコンビニあるし。
 しかし、世の中うまくいかないもので…。
 入り口に貼り紙。
『傘 売り切れました』
 扉の前で静止してたよ、俺。
 あーもう、どうしよう?
 考えてばかりで埒があかない。
 タクシー使うか?
 でもなぁ。
 車道から離れてるから、結構歩くんだよね。
 結局濡れるから意味ないんだよ。
 走るのと結局変わらない。
 雨、止みそうにないし。
 どっちかっていうと、だんだん激しくなってるし。
「何やってんの?」
 後ろから声。
 誰だかすぐに分かった。
「イノッチ」
 振り向くと、見慣れた男。
「岡田、結構前に出たって聞いたけど…」
「あぁ、うん。イノッチこそ俺より先に終わったのにまだいたんだ?」
「俺?俺は、ちょっと知り合いに会ったから立ち話しちゃってて」
 照れたように笑う。
 いや、なんで照れる?
「傘、なくてさ。コンビニも売り切れで。困ってんの」
「ふーん。俺、持ってるもんね♪」
 嬉しそうに鞄から折り畳み傘を取り出す。
「ダメだよ、天気予報はチェックしなきゃ」
 これ見よがしに傘をさして俺の前に立つ。
「なぁ、イノッチ」
「なに?」
「傘、貸してくれん?」
「はぁ?お前、何言ってんの?」
 イノッチの眉間に皺を寄せた顔が近づいた。
「タクシー代、出すから」
「…は?」
「俺、今、どうしても傘が欲しいんだよ」
 濡れてに会いに行けないんだよ。
「お前がタクシーに乗ればいいじゃん」
 それじゃ意味無いんだって!
「お願い」
 イノッチがすっごく不信そうに俺を見てる。
「傘、貸して?」
 頭を下げる。
「…訳が分かんないんだけど。理由は?」
「今から、とデートなんだけど…。アイツ、俺が濡れていったら絶対帰るとか言い出すだろうし…。せっかく久しぶりに外で会う時間あるのに、潰したくないんだ」
 正直に言った。
「ふーん。いいねー。うらやましいよ。ノロケやがって」
 イノッチ、白けてる?
「ま、ちゃんの為なら貸してやるよ」
「ホント!?」
「但し!」
 いのっちが急にまじめな顔になった。
「今度ちゃんとデートさせてvv」
「は!?」
 なんつー無茶苦茶なこと…。
「分かってるよ。俺と二人きりになんてさせたくないっつーんだろ?」
「あ、うん」
「けっ正直な奴。「そんなことないよ~」とか言えよ」
 いや、ソレは無理だ。
 イノッチだし。
「二人きりがダメなら他に誰かいればいいんだろ?」
「人によるけど」
 イノッチに健くんとかだとなんか、不安度増すし。
「その時都合があった奴で。そいつがダメなら他探す」
「…分かった」
 なんか、売ったみたいで嫌だけど。
 でも、はイノッチと遊ぶの好きだからなぁ…。
「お、じゃぁ、傘ね」
 すっげー嬉しそうだね、イノッチ。
「…ありがと」
 お礼言いながら、俺、もう不安になってるし。
「はい」
 イノッチの手が差し出される。
「…いくらかかるん?」
 イノッチの家までだったら…。
「買い物とかしなきゃいけないから、結構かかるんだよね。だから、一万円で良いよ」
 …一万円で良いよって。
 それ、ボッタクリじゃないの?
 とか思うけど、言い出したの俺だし。
「はい」
 財布から一万円札を出して渡す。
 背に腹は代えられないもんなぁ。
「じゃ、がんばれよ」
 満面の笑みでイノッチが言う。
「あ、うん」
 イノッチ、さっさとタクシー捕まえて行っちゃった。
 さて、傘も手に入ったことだし…一万円もしたけど…俺も行くかな。
 待っててな、
 今日は久しぶりに、二人きりで。
 雨になっちゃったけど。
 と一緒にいるだけで幸せだけど、今日は特別。
 久しぶりのデート。
 


あとがき
久々に明るくなったかなー???とか、思ってみたり。
最近暗い話ばかり書いていたので、これからは明るいのを書きたいですね。…思うだけ?
とにもかくにも、今年初(一応)の准一さんでした☆