キミが消えた日



 ただ、好きという気持ちだけで。
 それだけで、何でも出来るような気がした。

「健くん♪」
 TVを見ていた健の背中に が抱きついた。
「どうしたの?」
「ちょっと寂しくなっちゃったの」
「なんで?俺がいるでしょ?」
 健は を抱きしめる。
「そうだね。私には健くんがいるもんね☆」
 そう言って笑った の顔には少し憂いが見えた。
「ねぇ、 。何かあったの?俺に出来ることがあったら何でも言ってね?」
 心配そうに健が言った。
「…ううん。大丈夫だよ、健くん」
「本当に?」
「ホントだよv」
 そう言って、 は健に抱きついた。
 顔を見られないように。
 その顔は、今にも泣き出しそうだった。

 健が家に帰ると、 がいなかった。
 いつも健を笑顔で迎えてくれる がいなかった。
…?」
 健が家の中を探しても、 はいなかった。
 そのかわり、リビングのテーブルの上でメモを見つけた。

さよなら、健ちゃん。
今までありがとう。
愛してる。
大好きだよ。

  がいなくなった日、健は泣くことも忘れて彼女を探した。
 まわりの目なんて気にせずに街を駆けた。
 普段自分で動かすことのなかった車を運転した。
 ただ、 を探すためだけに。
  の携帯は解約されていた。
 健にはもう、 と繋がるものなんて残されていなかった。

 それから、1ヶ月経った。
 健はなんとか仕事をこなしてはいた。
 でも、それは気を紛らわすためだったのかもしれない。
 なぜ、 がいなくなったのか。
 それを考えたくなかっただけなのかもしれない。
 オフの日。
 健にとってもそれは苦痛でしかなかった。
 嫌でも思い出す。
  のことを。
 失ったものが大きすぎて、どうしていいのか分からずにいた。
 なぜ失ったのかも分からないまま。
 ふいに鳴る携帯。
 相手は「公衆電話」だった。
「…誰?」
 少し疑問に思いながらも、どうせメンバーの誰かだろうと電話に出た。
『…』
 電話の向こう側から返事はない。
 けれど、街の騒音は聞こえてくる。
「…誰なの?」
 健は眉をしかめた。
『…健くん?』
 女の声がした。
「… ?」
 健は呆然としていた。
『健くん…』
 名前を呼ばれて健は我に返った。
!?今、どこにいるの?」
『…』
  は答えない。
「ごめん!言いたくないなら…いいよ。ただ、俺が会いたいだけだから」
『うん…。ごめんね、健くん』
 健は が出ていった理由を聞いていいのか迷っていた。
「あのさ…」
 言ってしまえば、 が電話を切ってしまうような気がした。
「どうしたの?突然、電話…。俺は、すごく嬉しいんだけど」
『…声が、聞きたくなったから』
  が答えた。
「俺も、聞きたかったよ」
『…ごめんね。言えなかった』
「今は?」
『言えないよ。言えない。絶対に』
 弱々しく、けれど、しっかりと は言った。
「俺には、何もしてあげられなかったの?」
『健くんには、迷惑かけられないよ』
「いいのに。俺、 のためだったら何だってするよ? と一緒にいるためだったら何でもできるから!」
『そう言ってくれるんじゃないかって、思ってた』
  の声が少し和らいだ。
「ならっ!!」
『健くん。本当に出来るわけないんだよ…』
「そんなことない!そんなことないよ!!」
 健は焦っていた。
『もし本当に健くんが何でもしてくれたとして、それで、一緒にいることが出来たとしても、健くんには失うモノが多すぎるよ』
「何を失ってもいい!! さえいてくれれば!!」
『それは、違うよ』
「え?」
『健くんが、もし、V6を失ったとしたら?それって、健くんだけの問題じゃないんだよ?V6が健くんを失うんだよ?沢山いるファンのみんなが健くんを失うんだよ?』
  は健を諭すように言う。
『ファンの一人一人にとって。健君を失うことはとってもショックなことなんだよ?私だったら、死んじゃうかもしれない』
「… ?」
『健くんはV6でいて。ずっと輝いていて欲しいの。それが、私の最後のワガママ。そしてら、私、生きていける。仕事をしている健くんを見ているだけで生きていけるから』
 健には、 の言いたいことが理解できなかった。
 けれど、 が本気なのは分かった。
「…俺が、 の生きていくための力になれるの?」
『そうだよ。ごめんね。ワガママで』
「…分かった。俺、仕事、バリバリ頑張るよ。 が元気になれるように」
『ありがとう』
  の声はいつの間にか泣いていた。
「もう、会えないの?」
『うん。話すのも、コレで最後だよ』
 健は、胸が苦しくて何も言えなかった。
『さよなら、健くん』
「さよなら、
 少しでも互いの声を聞いていたくて、だけど、電話は切らなければならなくて。
 2人は同時に電話を切った。
「さよなら、
 健の呟いた言葉は、冷たい空気に吸い込まれて消えた。

 ただ、好きという気持ちだけ。
 それだけで、俺は強くなれた気がした。
 でも、それだけじゃ、キミを守れなかった。
 愛してる。
 愛してる。
 何も分からないまま、別れた。
 キミをまだ、愛してる。
 もう、会えない。
 キミが何を抱えているのか、最後まで教えてくれなかったね。
 今の俺に残されたもの。
 ただ、好きという気持ちだけ。



あとがき
また、ワケの分からないモノを書いてしまいました。
つか、健くん可哀相だよ!!コラ!!…て、書いたの私ってか?(汗)