未完成方程式6



「ずっとずっと、長い間……好きだった人がいるの」
 ちゃんの震える唇は、それでも言葉を紡いだ。
「本当のこと、言っちゃうとね。今でも、好きなんだ」
 誤魔化すように苦笑いを浮かべて。
「ずいぶん前に、その人には彼女が出来ちゃって。私は友達でしかないんだって思い知らされちゃった」
 おどけてみせるちゃんの姿が、僕の心を痛めた。
 すぐ分かった。
 ちゃんが誰を好きなんか。
 長ちゃんや。
 今のちゃんの辛そうな顔、前に一瞬だけ見たことあるんや。
 長ちゃんと一緒に楽屋に来た時。
 ちゃんが長ちゃんの方を見て辛そうにしてたのに僕は気づいてた。
「その人のこと、忘れなきゃって思ってるの。新しい恋をはじめなきゃって。だけど……」
 ちゃんは、笑っとって。
 きっと、苦しくて苦しくて。
 そやけど、我慢しとるんやと思う。
「光一のこと、利用したらええやん」
 きっと、ちゃんが飲み込んだ言葉。
 僕は肯定する。
「光一はちゃんの側におりたいんや。一緒におれたら幸せなんや。せやから、隣におったって欲しい」
 都合のいい言い方かもしれへん。
 せやけど、僕の本心やった。
「……出来ないよ」
 ちゃんはうつむいてしもうて。
「光一くんを利用するなんて、そんな最低なこと、出来ない……」
 きっと、迷ってる
 言葉は、理性は否定してても、心が甘えたがってる。
「楽になってええんよ?」
 僕は、励ますことくらいしか出来へん。
「生きるんて、苦しいことやけど、せやからこそ、もっと楽になってええんよ」
 ちゃんは考え込んでしもうて。
 それから長い間、言葉を交わさなかった。

 光一のためにも、ちゃんの為にも、2人には付き合って欲しいって思うた。



あとがき
やっと中盤?
まだ折り返してすらいない気が……ww
ごめんなさい、ごめんなさいww