sweet baby12
小さな公園に、小さな子供が一人。
その横を通りがかった健は気にかかり、公園へ入っていく。
砂場で遊ぶ男の子。
「ねぇ」
健が声をかける。
「だぁれ?」
男の子が顔を上げる。
「どうして一人でいるの?」
健がたずねる。
「一人じゃないよ。ママといっしょに、パパをまってるの」
不思議そうに男の子が答える。
「でも、ママは?どこにいるの?」
「え?」
男の子は立ち上がり辺りを見渡す。
「ママ?ママどこ?」
健の袖を掴んで健を見上げる。
「ママ、どこ?ママ、なんでいないの?」
男の子は泣きそうな顔になる。
「大丈夫だよ。きっとママ、何か用事があったんだよ。すぐ帰ってくるよ」
健がなだめるように言って、男の子の頭をなでてやる。
「ほんとう?」
「うん。本当」
男の子に向かってにっこりと笑う。
健は男の子の母親が本当に帰ってくるのか少し疑いつつも手を繋いだ。
「名前は?」
「たける。おじさんは?」
「お…おじさん?お兄さんは健っていうんだ」
健は笑顔を引きつらせながら答える。
「健おじさん?」
「お兄さん!」
無邪気に聞き返すたけるに健が声を荒げそうになる。
「じゃぁ、健おにいさん」
「よくできました」
健はやっと呼び方を訂正できたのにほっとした。
「今日は、ママとここに来たの?」
「うん。きょうはね、パパとおでかけするから、こうえんでまってるの」
嬉しそうにたけるが言う。
「そっか。よかったね」
「うん!だって、パパにあえるのすごくひさしぶりなの」
「…え?」
健は眉をひそめる。
「パパはね、おしごとがいそがしいからいっしょにいないの」
「ママと二人?」
「そぉだよ」
たけるが胸を張る。
「ぼくがママをまもってるから、パパはあんしんしておしごとできるんだよ!」
「そっか。偉いね、たけるくんは」
健はたけるの頭をなでてやる。
「うんっ!」
返事をしたたけるは公園の入り口を見て表情が変わった。
「ママ!」
大きな声で言い、走っていく。
健はちゃんと母親が帰ってきたことに安堵して公園の入り口を見る。
逆光でその顔は見えない。
「ママ、あのね!あのおにいちゃんがいっしょに、ママをまっててくれたんだよ!」
たけるの声がする。
その母親は、なぜか足を止めたまま動かない。
「ママ?」
「お礼、言わないとね」
ゆっくりと母親が歩き出した。
健に少しずつ母親の姿が見えるようになった。
「…?」
「久しぶり」
たけるの母親は、だった。
「ママ、しってるひと?」
たけるがを見上げる。
「うん。知ってる人だよ」
「そっかぁ」
「たける、まだパパがくるまで時間があるから遊んでいていいわよ」
はたけるに微笑む。
「ほんとう?じゃぁ、トンネルつくる~!」
たけるが砂場に走っていく。
と健の視線があう。
「5年ぶり、だっけ?」
「うん」
がうつむく。
「変わってないね」
「健くんこそ…」
会話が途切れる。
「立ち話も、アレだし、あっちにベンチがあるから…」
がベンチを指す。
黙ったまま二人は移動する。
並んで、しかし間を開けて座る。
「元気、だった?」
先に口を開いたのは健。
「うん。元気だよ。健くんは…元気そうだったね」
「まぁ、ね」
しばし、話に詰まる。
「たけるくん、だっけ?可愛いね」
「そうかな?ありがと」
二人の視線はたけるに向いていて、決してあわせなようとしない。
「今、幸せなの?」
健が言う。
「幸せだよ。たけるもいるし」
が答える。
「そっか」
健は立ち上がる。
「が幸せならそれでいいや。僕、もう行くね」
「あ、うん」
健が視線をたけるからに移した。
「会えて良かった。元気でね」
「うん」
が微笑んだ。
「あ、パパ~!!」
たけるの声が公園に響いた。
健は公園の入り口を見た。
そこには、博がいた。
「長野くん…?」
健の姿を見て、博は足を止めた。
「健…」
「パパもしりあいなの?」
たけるが博を見上げる。
「知り合い…友達、かな?」
「そうなんだぁ!」
たけるが言う。
博が健との前に立つ。
「見つかっちゃったね」
博がに笑いかける。
「長野くん?」
健が博を見る。
「たけるももう来年から小学生だし、いつまでも嘘はつけないよ?」
博がを見つめる。
は黙り込んだままだ。
「いい機会じゃない?ね、ちゃん」
博がたけるの頭をなでながら言う。
「パパ?」
たけるが博を見上げる。
「いいよね?」
博の言葉にはかすかに頷く。
「たける、お話聞いてくれる?」
博はまっすぐたけるを見る。
「なぁに?」
「パパとママね、たけるに嘘ついてることがあるんだ」
「うそ?」
「うん」
博が健を見る。
「俺はね、本当のパパじゃないんだ」
博は健に微笑んだ。
「たけるの本当のパパはね、この人だよ」
「長野くん…?」
健は博とを交互に見た。
「嘘でしょ?」
健の言葉には首を振る。
「本当…なの?」
「パパ?」
たけるが不安げに博を見る。
「パパは、健だよ」
博はたけるを健の前に立たせる。
「僕の子供?」
健はその場に立ちつくしている。
「そうだよ。健の子供。5年前、ちゃんが健の前から姿を消した理由」
博はの手を取る。
「子供が出来たって分かったとき、ちゃん、悩んだんだよ。健に言えなかったんだよ」
「なんで…?」
「健は、もし、あの時事実を聞いたらどうしてた?」
少し考えて、健は答える。
「そりゃぁ、びっくりはするだろうけど、僕、多分、結婚とか…」
「だろうね」
博が微笑む。
「ちゃんはね、それが怖かったんだ」
「え?」
「あのころ俺たち、大切な時期だったろ?メンバーが結婚とか、出来るような状態だったと思う?」
「それは…」
「だから、ちゃんは健の前からいなくなろうって思ったんだよ」
ほほえむ博。
うつむく。
立ちつくす健。
そして、たける。
「もう、いいよね?俺、分かってるんだからね?二人とも、まだお互いのことが好きなんだって。二人とも、ちっとも変わってないことも。ずっと近くにいたからね」
博は三人に背を向ける。
「幸せになってね」
一言残して去っていく。
「パパ?」
たけるが博の背中に声をかける。
それでも、博は振り向かずに公園から姿を消した。
「…」
健がを見つめる。
「結婚、しよう?」
「…え?」
が顔を上げる。
「今すぐとは言わないから。たけるくんのこともあるし、少しずつでもいいから話し合おう?僕、今でものこと、好きだから」
「健くん…」
が涙を流す。
「、愛してる」
「ママ?」
たけるは、の涙を拭く。
「ママ?なんでないてるの?」
はたけるを抱きしめる。
「嬉しいの。嬉しいの。ママね、今、とっても嬉しいんだよ」
I love you,my sweet babies.
あとがき
なかなか終わらなかったですが、話自体は単純でした。
申し訳ないです。なんとか年内に終わることが出来てよかったです☆
ではでは、良いお年を~♪