バースデーパニック?
忙しい時期を迎えてしまった。
毎日毎日与えられた「課題」を徹夜で片付けていく。
もう何日ちゃんと寝てないんだろう…。
気が付けば1日が終わっていて少し休んだらまた次の日が始まって…
そんなことがしばらく続いていたある日、久々に休めることになった私は
その休日を睡眠に使おうともせず、ここぞとばかりに家を飛び出した。
―――
街の方に出た私は欲しかった物を買いに行ったり、いろんなお店を見て回ったりしていた。
すると、行った先で偶然友達に出会った。
彼女も私同様昨日まで課題に追われていた1人だ。
そしてまた同じようにストレス発散に街に出たらしかった。
思いがけない「同士」との遭遇に盛り上がった私達はそのまま一緒に遊んだ。
いろいろな所に出掛け、彼女と別れて家路についた頃には
もう時計の針は23時を示していた。
遊び疲れた体で買った物を入れた袋を引きずって自分の部屋の前に辿り着く。
「…遊びすぎちゃったかなぁ…?」
幸い明日も休みだったが、明後日以降はまた予定が詰まっている。
そう思うと今日の行動はどこか間違えたような気がして少し後悔した。
…でも終わってしまったものはしょうがない。
とりあえず今日は買った物を片付けてお風呂に入って寝よう。
部屋の前で早々と「部屋に入ってからの予定」を計画し、カバンの中の鍵に手を伸ばした。
さぁ、これで扉を開けさえすれば後は片付けてお風呂入って…
「!?」
鍵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・開いてる?
「…。」
落ち着いて今朝のことを思い出してみる。
1人暮らしだから戸締りにはかなり気をつけている。
待ち合わせをしていたのならまだしも今日は勝手に出掛けたのだから急いで掛け忘れた、なんてことも無い。
・・・・・・・・・・・・泥棒?
思考は「最悪の事態」に辿り着いた。
今もし入って泥棒がいたら、とかは考えてられない。
私は覚悟を決めて自分の部屋のドアを開けた。
―――
恐る恐るドアを開けると…玄関に私の物ではない靴が置いてあった。
「!!」
やっぱり誰か入ったんだ…。
まだある、ってコトはまだいる、ってコトだよね…
しかもご丁寧に揃えてあるよ…でも、どこかで見たことがあるような…。
不思議に思いつつもどこか怖くてドアを半開きにしたまま中の様子を伺っていると
急に前方にあるリビングのドアが開いた。
「っ!!!」
近付いて来る足音に思わず目を閉じたその時…
「何やってんだよそんなトコで。」
「…え?」
聞き覚えのある声が上の方から聞こえた。
恐る恐る目を開けると視界に声の主の足が映った。
そしてゆっくり顔を上げるとそこにいたのは…
「ひ、博!?」
恋人の博だったのです。
―――
「…よかった~、泥棒でも入ったかと思って焦ったじゃん!」
「…お前人を何だと思ってんだよ?それに帰ってくるの遅すぎ!」
「ご、ゴメン…。」
「ったく…。」
とりあえず鍵が開いていたのは博が合鍵で入ったから、って言うのが真相で…
盗難の被害には遭っていなかった。
「そういえばさぁ…。」
「なに?」
「なんで今日来たの?」
ふと湧き上がった疑問。
別に今日は家に来る約束も無かったはずだ。
しかも連絡もよこさないでずっと待っていたなんて。
「…、それ本気で言ってんの?」
怪訝そうに私を見つめる博。
そんな博の目を見ながら素直に頷く私。
「うん。なんで???」
「あのなぁ…。」
博は一度項垂れてから呆れたように私を見てこう言った。
「今日はの誕生日だろ?」
―――
「あ…。」
博のその言葉で思い出した。
…そうだ、今日私の誕生日…。
ここ数日忙しくて日付の感覚全然無かった。
(ほとんど寝てないから日付変更の瞬間さえ把握しきれてなかった、とも言う)
「…本気で忘れてたのか?自分の誕生日だぞ…。」
また呆れたように博はそう言った。
「うん…最近ずっと忙しくって。」
「…無断で来た俺もだけどさぁ…何やってたんだよこんな遅くまで。」
そう言って博が自分の腕時計を私の目の前に近付けた。
時計の針が示すのは、23時30分…
「の誕生日もう1時間無いぞ。」
「そうだね…。」
残念だったな。
なんか自分が忘れてたのもあるし…知らない間にあと30分しか無いなんて。
博も待たせてたみたいだし…悪いことしちゃった。
…そんな風に考えたら悲しくなって…少し俯いた。
「でも…まだ終わったわけじゃないし?」
「え?」
「俺が勝手に待ってただけだからそのことはもういいや。それより…。」
「?」
その言葉の続きが気になって顔を上げた私の目に飛び込んできたのは…
博のいつもの優しい笑顔と
「誕生日おめでとう、。」
あたたかい、お祝いの言葉。
「…博ぃ…。」
嬉しくて泣いたことなんて無かった気がする。
「え?」
気が付いたらどこか焦ったような博に抱き付いていた。
「ちょっ…なんで泣いてんの…?」
博は慌てながらもちゃんと私を支えてくれた。
「…ありがとう…。」
小さな声でそれだけ呟いて博の胸に顔を埋めた。
ホントに小さな声だったと思うけど、博には聞こえていたようだ。
頭を撫でてくれる手があたたかくて優しくて…会えなかった分懐かしくて仕方ない。
―――
しばらく久々に会ったを抱き締めていた。
泣いていた彼女が落ち着いた頃合いを見計らって口を開いた。
「、コレ…って、???」
少しも反応が無かったので不審に思って腕の中の彼女を見たら…静かに寝息を立てていた。
「…寝ちゃったのか。」
少し呆れながらも思わず口元が緩んでしまう。
ここ数日随分忙しかったみたいだしな…疲れてたんだろう。
「…しょーがないなぁ…。」
起きる様子も無いを抱き上げて寝室まで運んだ。
ベッドの上に寝かせての左手の薬指に、渡そうとしていた指輪をはめた。
枕元の時計が示すのは23時58分。
「2分前…なんとか間に合ったね?」
規則正しい寝息を立てる彼女の額に軽く口付けた。
「誕生日おめでとう。」
博は微笑みながらそう呟き、の家を出た。
…がこのプレゼントに気付くのは翌日の朝のことである。
HAPPY BIRTHDAY☆
奈緒のつぶやき
いかさんとの相互リンク記念に頂きました☆
いかさん、私の誕生日に合わせてくださって本当にありがとうございます!!
博に祝ってもらえるなんて私は何て幸せ者なんだ!!