親友
なんとなくテレビをつけて眺めていると、携帯が鳴った。
メールだ。
携帯の画面に表示されている名前は、ブラウン管の向こう側で笑っているアイドルと同じ。
三宅健。
内容は、いつもとあまり変わらない。
『今、仕事終わったよ♪でさ、今から飲みに行かない?俺は今、テレビ局の近くにいるんだけど。どこにいる?家?』
私たちは飲み仲間。
私は親友のつもりでいる。
健がどう思っているのかは知らないけど、私たちは何でも言い合うし、良い相談相手だし、健もテレビでは見せない表情をしたりするから、少なくとも友達くらいには思ってくれてるんじゃないかな。
『今、家でテレビ見てるよ~。「学校へ行こう」をね。(笑)いいよ。飲もうか!どこがいい?』
メールを返信する。
今となっては、当たり前のように会ったりしているのだけど、知り合った頃はかなり戸惑った。
だって、健はアイドルだよ?
でも、中身は普通の男の子だって分かってからは、私も普通に話せるようになった。
健は、私のことを「唯一普通の男として見てくれる異性」とか言ったことがある。
ふざけて「私は変人か!?」と言ったら、健は大笑いしてたっけ。
そういう掛け合いが出来るのが嬉しいんだって笑ったその顔は、アイドルの健とは違っていたと思う。
『俺のこと見てくれてるの?うれしい♪じゃぁ、いつもの店で会おう!あ、テレビ見終わってから来てもいいよ~v』
『いつもの店ね?すぐ行く。暇だからテレビつけてただけだもん♪健を見てたわけじゃないありません~☆』
いつものように繰り返される、意味のない言い合い。
私はこれが嫌いじゃない。
むしろ好き。
健も楽しんでるみたいだし。
これが健にとって息抜きになるんだったら、友達してる甲斐もあるってもんだよね。
『相変わらず手厳しいなぁ、は。(笑)じゃぁ、いつもの店でねv』
出かける準備をする。
でもまぁ、健と飲むだけだし、財布があればいいか。
服を着替えるのが面倒だったから、私は、会社に着ていったスーツのまま家を出た。
店に着くと、既に健がいた。
「早かったんだね」
「まぁね。メール打ちながら歩いてたし」
「私が来れなかったらどうするつまりだったのよ?」
「考えてなかったよ。でもいーじゃん。は来たんだしvv」
健が笑う。
「相変わらず口が上手いわね」
「そう?」
「そうよ。そういうことサラっと言っちゃうんだもん。他の女の子に言ったら勘違いされちゃうよ?」
呆れながら言う。
「には通用しないんだ?」
「そうよー。耐性がありますから~」
正直に言っちゃえば、健と出会ったばかりの頃は時々クラッときたことがあるんだよね。
けど、こう頻繁に言われると、さすがに少々じゃ動じなくなってしまいましたよ。
「えー?だからじゃないの?」
「それって、私が女じゃないって言いたいの?」
「どうでしょうね~」
健は笑ってはぐらかす。
「もうっ!そういう意地悪はやめてよねっ」
嫌いじゃないけど。(笑)
「はいはい」
健もやめる気はないみたいだけど。
「あ、そうだ、何か注文した?」
「うん。ウーロン茶と焼き鳥」
ここは居酒屋。
でも健は酒を飲まない。っていうか、飲めない。(笑)
いつも「飲もう」って言って会うけど、飲むのは私だけ。健は食べるのが専門だったりする。
「そうねー、じゃぁ、私は熱燗と枝豆にしよ♪」
店員を呼んで注文する。
「、なんかいつもと違わない?」
「え?どこが?」
「スーツ着てるの、初めて見た」
「そうだっけ?」
「うん」
「ごめんね~。着替えるの面倒だったから~」
「何ソレ?俺が相手だとオシャレする必要がないと?」
「そーとも言う」
「うわ、ひっでー」
2人で笑う。
こういう軽いノリが好き。
でも、それだけで健の友達をしているわけじゃない。
「で?今日は何の話なの?」
健が私に突然連絡してくるときは、重さの違いはあっても必ず何か私に相談していた。
健の呼び出し。
それは、彼の救難信号みたいなものだ。
そこまで深刻な問題じゃないんだけど。
「別に。に会いたかっただけvv」
笑顔で言う。
「ウソツキ。私を誰だと思ってるのよ」
「やっぱり分かる?」
「当たり前!!健のことなら何でも分かるもんね~」
「…分かってねーよ」
「え?何?」
「あ、俺の分来た~v」
店員がウーロン茶と枝豆を持ってきた。
「ちょっと、さっきのどういう意味よ?」
「ん?あー、ねぇ?俺のこと何でも分かるっつーのは大げさでしょ?今日の俺のスケジュールとか、知ってる?」
「…知らない」
「ほらねー」
「私はそーいう意味で言ったんじゃないんだけどっ!?」
「…分かってるよ」
「何?分かってて言ったの?意地悪ね」
「ふ~んだっ」
健はすねたふりしてウーロン茶を飲む。
「あっ」
一口飲んで声をあげる。
「何?どうしたの?」
「う、ううん、何でもない」
健は少しあわてて答えた。
結局健は本題を口にしないまま、どうでもいい世間話だけで30分過ごした。
私は化粧を直しに席を立った。
話したくないのなら別にいいのだけれど、話したいから私を呼び出したんじゃないのかなぁ?
しかも健、今日は妙にテンション高いし。
私に言いにくいことなんて何だろう。
仕事で辛いことでもあったのかなぁ?
考えても答えは出ないから、やっぱり健に聞いてみよう。
…と、決心して席に戻ると、健は寝てしまっていた。
おいおい…。
「ちょっと、健?」
声をかけても、揺すっても、つねっても、起きない。
ダメだ。起きない。
そんなに疲れてたのかなぁ?
私は健が珍しくウーロン茶を半分しか飲んでいないのに気付く。
いや~な予感がした。
一口飲んでみる。
…やっぱり、これ、ウーロンハイじゃん…。
気付かずに飲んじゃったのかなぁ?
「どぉしよう?」
この様子からして、起きそうもない。
家まで送り届けようにも、彼の家を知らない。
だからって、私の家に連れて行くのもどうなんだろう。
健は、いつも私と二人きりになることを拒んだ。
人が大勢いる場所でしか会ったことがない。
健はアイドルだから、女性と二人きりでいるのはスキャンダルしてくれって言ってる様なもんだって、少し寂しそうに笑って言ってた。
けど、この際、ごちゃごちゃ考えてられない。
タクシーを呼んで、健を乗せる。
女の子並みに体重が軽いから運びやすくて助かった。
健だってバレるんじゃないかって心配したけど、タクシーの運転手さんも気付いてないみたいだったし、大丈夫だろう。
健をベッドに運んで寝かせた。
そんなにたくさん飲んだわけじゃないから、そのうち目覚めるだろうと思いつつ、私はコーヒーを淹れた。
健の眠るベッドの横に座ってコーヒーを飲む。
眉間にしわをよせて眠る健を見てると、やっぱり何か悩んでいるんだろうと思った。
健の顔を見てると、やっぱりアイドルなんだなぁと思う。
そんじょそこらに転がっている男どもとは顔のつくりが違う。
しかも、顔に似合わず筋肉しっかりついてるし。(笑)
ライブでの健ってきっと格好良いんだろうな。
でも、一度も行ったことがない。
健はチケットくれるって言うけど、私みたいに大してV6のファンでもない人間が行くより、ファンの子が一人でも多くライブに行けた方が良いんじゃないかと思うから。
「ここ…どこ?」
一人で考え事してたら、健の声がした。
「おはよ」
健をのぞき込む。
「…?」
驚いた顔で健は固まっている。
「私の部屋だよ」
「え?」
「健、ウーロン茶とウーロンハイ間違って飲んで寝ちゃったでしょ?アイドルを置き逃げなんて出来ないから連れて来ちゃった」
「…そっか」
健は上半身を起こす。
「大丈夫?」
「うん」
「良かった」
安心して顔が緩む。
「…んだよ」
「どうしたの?」
「何でそんな顔すんだよ…」
健が私を抱き寄せた。
「何?健?どうしたの?」
「何で連れてきたんだよ…」
何を言ってるの?
健の腕に力がこもる。
「痛いよ…?」
「やだ、離さない」
まだ、酔ってる?
「は俺のことどう思ってるの?」
「と、友達でしょ?」
「違うよぉ…」
「じゃぁ、親友?」
「そんなんじゃ…」
何?
「健?酔ってるんでしょ?」
「酔ってなんかないっ」
健の力強い声。
今まで聞いたことがない、健の声。
「…け…ん?」
「今まで俺がどんな思いでっ」
健の言葉が詰まる。
健の腕から解放される。
「俺…帰る」
健はふらふらと立ち上がり、歩き始める。
私は何も言えないでいる。
「ごめん、俺、ちょっと、おかしかったかも」
健は振り返って辛そうに言う。
でも、顔は笑っている。
「ねぇ、健。何かあったんじゃない?今日、ずっと様子おかしかったよ?」
「そうやって、いつも気付いちゃうんだね」
「だってつきあい長いもんv」
暗い健を励まそうと笑いかける。
「…なのに、俺が何を悩んでるかなんて気付かないんだ」
「健?」
「やめてくれ!俺の名前を呼ぶな!目の前に現れんな!」
心が凍った気がした。
「なんで…?今までずっと、友達だと思ってたのに…」
悲しいって気持ちも、通り越してる気がする。
「ごめん…」
一言だけ残して、健は出て行こうとした。
何故か、涙が溢れて止まらない。
信じていたものを失ったような、そんな気持ち。
ドアノブに手をかけて出て行こうとする健が振り返り、私と目が合った。
その瞬間、なぜか健は切なそうな顔をしてた。
「泣くなよ」
私を抱きしめて健はほんの数秒だけど、力強いキスをした。
「…健?」
「だから二人きりになりたくなかったんだ」
え?
「俺、自分が抑えきれなくなるの分かってたから…」
それって、どういう意味?
「俺、が好きだ。一人の女の子として」
健が私を好き?
「なぁ、何か言えよ!!」
言葉が出ない。
「全然気付いてなかったよな?鈍感なんだよはっ!」
また、キスされた。
健の思いなんて、気付かなかった。
本当に鈍感みたい。
「健…ごめんね?」
きっと、今までいっぱい健を傷つけた。
だから、ごめんね。
「なんだ。やっぱりね」
「え?」
「俺、フラレるの分かってたのに」
健の目が潤んでるように見える。
「もう、会えないね。こんなの、気まずいもんね」
健の瞳から、涙がこぼれた。
「バイバイ」
健は無理して笑顔で言った。
健が出て行く。
もう、二度と会えない?
そんなの、嫌。
「待って!」
「…?」
「もう会えないなんて嫌だよ」
「でも、会ったら、俺、何するか分かんない」
「確かに、私、健に恋愛感情とか、持ってない」
「まさか、「友達のままでいて」とか言うなよ?残酷すぎるよ、そんなの」
「健のこと、嫌いじゃないよ?」
「でも、恋愛感情はないんだろ?」
「うん」
「なら、呼び止めんなっつーの」
「けど、キス、嫌じゃなかった」
「…へ?」
「まだ、わかんないけど、健を好きになれる気がする」
「それって…?」
「っていうか、私、健のこと「友達以上」だとおもってる。それを「親友」なんだと思ってたけど、違うのかもしれない」
「OKってこと?」
「そうなるのかも」
「マジで…?」
健の表情がみるみる変わっていく。
「、大好きvvv」
健が抱きついてくる。
「ちょ、ちょっと健!?」
「俺、すげーウレシーよ!!」
「もうっ!痛いってば!!離してよ!」
「ヤダvだって、って抱き心地いいんだもんvv」
「仕方ないなぁ(苦笑)」
「今から俺たち「カレカノ」だからね?」
「ハイハイ」
「愛してるよvvv」
あとがき
こまきさんへの「掲示板初カキコありがとう」小説です。
頑張ってみたのですが、駄作にしかなりませんでした。ごめんなさい
健くんと友達から恋人へってことだったのですが…。
恋人に…なってるのか?(汗)