酔っぱらいと彼女



「お前はV6を愛してんのかーっっっっ」
 快彦は酒に呑まれて博に絡む。
「はいはい分かったっから」
 苦笑しつつ博は快彦の背中を叩く。
「お前はV6を愛してんのかーっっっっ」
「愛してるって」
「本当に愛してんのかーっっっっ」
「…はいはい」
 不毛な会話はなかなか終わらない。
 博はシラフで完全に酔っ払っている快彦に付き合っているのだからたまったものではない。
 しかし、ここで問題なのは快彦だけではない。
 この席には3人いるのだ。
 博の目の前にいるのは昌行。
 酔いつぶれて熟睡中。
 ここで飲み始めたのは午後9時。
 それから3時間半。
 彼らのいる場所は通いなれた居酒屋。
 個室をとっているので誰かに彼らの醜態(?)を見られる心配はない。
「俺、帰りたいんだけど…」
 博の切なる呟きは、2人に届かない。
 置き去りにして帰ってやろうかとも思うが、そうもいかない。
「俺はV6を愛してるぞーっっっ」
 快彦は言いながら博に抱きつく。
「うわっ!おい!離れろよ」
 博は快彦を引き剥がそうとするが、酔って筋肉の弛緩した男はそう軽くはない。
「…重い」
 快彦を引き剥がすことを諦めた博は携帯を手にとって電話をかけた。
「もしもし? さん?」
『どうしたの?長野くん。こんな時間に』
 現在夜の12時半。
 もっともな意見である。
「実はさ、井ノ原と飲んでるんだけどさ、俺、もう帰りたいんだよね。悪いけど、井ノ原迎えに来てもらえないかなぁ?」
『わかった。行く。どこ?いつもの店?』
「うん。ごめんね」
『いいよ。っていうか、迷惑かけてるのはうちの快くんのほうでしょ?』
「あはは。確かに」
『ちょっと時間かかるかもしれないけど、その間、快くんをよろしく』
「わかった。待ってる。じゃぁね」
『あとでね』
 博が電話を切ると、快彦が再び絡んでくる。
「誰と電話してたの?」
 質問の内容からして、博が電話しているときの言葉は一切聞いていなかったらしい。
「…秘密vv」
「ひどいよ!長野くん!俺の話を聞かないで電話してたくせに」
「何で井ノ原の話を聞いてやらないといけないんだよ」
「やっぱりV6を愛してないんだな!?」
「何で!?」
 不毛な会話は続く。

  が店にやってきた。
「快くん!帰るよ!!」
「あれ~? だぁ」
 快彦はヘラヘラ笑って言う。
「いらっしゃい、 さん。ごめんね?こんな役頼んじゃって」
 博がすまなさそうに を見る。
「いいんですよ。慣れてますし。それに、酔った快くんをどうにかできるのって、多分私と長野くんだけですから」
「そうかもね」
 2人で苦笑。
~」
 快彦が に抱きつく。
 その重みで は潰れてしまう。
「ちょっと井ノ原! ちゃんを殺す気か!?」
「快くん、重い…」
「うーん 、気持ちいぃ~vvvv」
「ちょっと!快くん!?怒るよ!?」
「怒っちゃやだぁー」
「じゃぁ、離れなさい」
「えー?」
「…怒るよ?」
 さっきまでとは少し違う低い声で がそう言うと、快彦はしぶしぶと から離れた。
「悪いけど、 さんそのまま井ノ原連れて帰ってくれる?俺はあの人連れて帰るから」
 そう言って博が指差した先にいる人物を見て は赤くなる。
「さ、坂本くんも一緒だったの!?」
「そうだよ」
「先に言ってくれてれば良かったのに…」
「何で?」
「だって坂本くんにこんな姿見せられないよぉ」
「こんな姿?」
「ほら、快くん調教したりとか…」
「そっか」
「うん」
さん坂本くんのファンだもんね」
「////////」
「ま、今はぐっすり眠ってるから大丈夫だよv」
「そう、だよね?」
 博と が笑いあう。
「…なんで?」
  から離れて以来、座り込んで博と の会話のやりとりを見ていた快彦が口を開いた。
「なんで は坂本くんの事になると態度変わるの?」
「快くん?」
「俺って の何? は坂本くんが好きなんでしょ?何で俺のトコにいるの?坂本くんのトコに行けばいいじゃん!!」
 快彦はうつろな目で言葉を吐き出す。
「い、井ノ原!?」
 博は快彦の言葉に驚く。
「…ごめん、長野くん。快くん壊れちゃったみたいだから、さっさと連れて帰るね」
「え?あ、うん…」
  は意外に冷静に判断する。
 博にはそれが不思議に思えて仕方がない。
「じゃぁ、またね」
 そう言って は未だブツブツ言っている快彦に肩を貸し、立たせる。
「もうちょっと坂本くんの可愛い寝顔を眺めてたかったんだけど、仕方ないね(笑)」
 寂しそうに笑うと、 は快彦を支えて店を出ていった。
「井ノ原、何であんなこと言ったんだろう…?」
 店に残された博は、昌行の頬をつねりながら2人のことを考えていた。(痛ぇよ!!by昌行)

  は快彦の家にいた。
 当然、酔っ払った快彦を連れて帰ってやったからなのだが。
 半分寝ている快彦をベッドに置き去りにして、 は勝手知ったる恋人の家の冷蔵庫からビールを取り出した。
 電気もつけず、闇の中で開けられたままのカーテンから差し込む月明かりをソファーに座って浴びる。
「…バカ」
 呟く。
「長野くん、びっくりしただろうなぁ。…私もびっくりしたし」
 ビールを呷る。
 あの時、 は冷静に見えてはいたものの、実際はとても焦っていた。
「快くん、ずっとあんなこと考えてたのかなぁ?」
 ため息ひとつ。
 少し、泣きたくなる。
「快くんの、バカ」
 膝を抱えてうつむく。
「…何だよ」
  の背後から低い声が返ってくる。
「快くん!?」
 振り向くと、そこに快彦がいた。
「寝なかったの?」
「…目が覚めた」
「…そう」
「何で俺がバカなの?」
「…だって、お店でおかしなこと言ったじゃない」
「おかしなこと、ね?」
「長野くん、驚いてたよ?」
「…坂本くんのことか」
「うん」
「だって 、いつもそうじゃん。俺なんかといる時より、坂本くんと一緒の時のほうが楽しそうじゃん?」
「…そうね。楽しいわよ」
「ねぇ、坂本くんが好きなんでしょ?」
「…好きよ?」
「なら、何で俺のトコにいるんだ?」
「いたいからよ」
「わかんねーよ。何で?坂本くんが好きなら坂本くんのトコに行けばいいじゃんか!!」
「本当にそう思ってるの?」
「…何だよ」
「いいよ。私、坂本くんのトコに行く。バイバイ快くん」
  は立ちあがって玄関へ向かおうとする。
「待てよ!!」
 快彦が の腕をつかむ。
「何よ?出て行って欲しいんでしょ?」
「違う!」
「じゃぁ、何?」
「…行くなよ」
「は?わけわかんないんだけど」
「坂本くんばっか見ないでよ。俺のことだけ見てくれよ」
「無理」
!!」
「バカな快くん。ホント、バカ」
「んだよ」
  は微笑む。
「このヤキモチやき!快くんのこと見るってことは、V6やトニセンを見るってことでしょ?坂本くんを視界に入れるなっていうのが無理な話だってわかってるでしょ?」
「だけど、 の坂本くんを見る目は普通じゃない!!」
「だって、私、もともと坂本くんのファンなんだよ?普通でいられるわけないじゃない。たとえ彼氏の仲間でもね」
「信用できねぇ」
「最悪」
「だって顔が違いすぎるぞ!俺といるときとは!!」
「…もう。1回しか言わないから、よく聞いときなさいよ?」
  は快彦を見据えて口を開く。
「私にとって快くんは水とか空気みたいに、あって当たり前なの。だから、妙に構えたりとか、緊張したりとかしないし、したくないの。あって当たり前ってことはね…」
  は少し赤くなってうつむいた。
「水とか空気って、あるのが当たり前なんだけど、ないと生きていけないんだからねっ!」
 一気にまくし立てて、 は快彦を睨む。
「へ?ちょ、まっ、ええ!?俺って愛されちゃってる?」
 快彦の驚きは半端じゃない。
「何で疑うの?それが信じられない!」
「だって、 と坂本くん年が同じだし、デビューしたときから坂本くんのファンだって言ってたし、やっぱり坂本くんっていい男だし…」
「ホント、バカ」
  は快彦に抱きつく。
「不安なのは私のほうなのよ?快くんってば、友達の数が半端じゃないし、誰とでも仲良くなれるでしょ?その中にはもちろん可愛い女の子もたくさんいるでしょ?私なんか、年上過ぎて相手にされなくなるんじゃないかって思っちゃう」
「何言ってんだよ。友達は友達だろ?」
「知ってる」
「なら、不安になるなよ」
「坂本くんにヤキモチやいちゃう快くんには言われたくないなぁ?」
「酷っ」
「でも、言っとくけど、これからも私は坂本くんのこと好きだからね?」
「ええ~~~~~~~!?」
「坂本くんの寝顔可愛かったなぁvvvvvv」
「俺のはっ!?」
「…ノーコメント」
「何で!?」
「だって、ねぇ?」
「あーもう!お仕置き!!」
 快彦は を押し倒す。
「何で私がお仕置きされるのよ?勝手にヤキモチやいたのは快彦でしょ?」
「うるさいっ」
 言うなり快彦は唇で の口を塞ぐ。
「今日は寝かさないからな?」
「バカ//////////」



あとがき
もにょさんへの健くん&剛くん誕生年1979番踏んでくれてありがたう小説です♪
なんだか、リクされた内容と違う?ってか、どうなんでしょうね?一応昌行ファンの年上彼女でヤキモチやきな快彦さんですが。
なぜか酔っぱらいです。そっちのが自然な快くんらしいかなぁ、と思って。(爆)