変?
「変」
剛がつぶやいた。
「何が?」
その言葉を聞き取った健が剛に尋ねる。
「剛くんどうかしたん?」
准一も声をかける。
「なんか変なんだよ」
釈然としない様子の剛。
「だから、何がだよ」
健が聞き返す。
「…」
「ちゃん?」
健と准一は剛の恋人であるが先程のライブに来ていたことを思い出す。
「変って、ちゃん楽しそうやったやん」
「ああ」
「空元気って感じでもなかったし…」
剛を挟んで沈黙が訪れる。
「どこも変やなかったやん」
「まぁ、いつもより弾けてたかもしれないけど」
「それなんだよ!」
いきなり剛が反応を示す。
「はぁ?」
健が気の抜けた声を出す。
「そうなんだよ!いつもとノリが違ったんだよ!」
真剣な目で剛は健と准一を見る。
「そんだけ?」
呆れたように健。
「絶対おかしいんだよ!なんか、違うんだよ!俺と違うとこ見てるんだよ!」
「俺?」
准一がふざけて言う。
たちまち剛の拳骨が頭に落ちてくる。
「いってぇ」
「ふざけんな、デコ。意味が違うんだよ」
剛は准一を一度睨んでから再び話しだした。
「俺のこと見てるけど、俺のこと見てないんだ」
「は?」
「いや、意味分からんし」
健と准一が口々に言う。
「だから、の気持ちが俺の方に向いてないって言ってんだよ!!分かれよ!」
「分かるかよ!!」
「はじめからそう言ってくれればええのに」
「うっせぇ!」
一喝し、剛は立ち上がる。
「あーもう!俺はどうすりゃいいんだよ!!」
「知るかよ」
「そんなに気になるんやったら本人に聞けばええやん」
准一がさらっと言う。
「そうだよ、聞けばいいじゃん」
健も同調する。
「できねぇよ!」
「じゃ、俺が聞く」
健は言うが早いか、携帯からの番号を呼び出し通話ボタンを押す。
「健!?」
剛があわてる。
「もしもし、ちゃん?」
「マジでかけてんのかよ!?」
健は剛を無視して話し続ける。
「今日は来てくれてありがと。嬉しかったよ」
「おい」
何か言いたげな顔の剛を片手で払い除けながら健はと喋る。
「ところで、聞きたいことあるんだけどさ」
健の口元が歪む。
「なんか今日、ライブ終わってから剛の機嫌悪いんだけど、心当たりある?」
健がストレートに質問したのを見て剛はその場にしゃがみこむ。
「本当?」
健が険しい顔で聞き返す。
それを見て剛が眉を寄せる。
「本当に心当たりないのぉ?」
つまらなそうに健。
剛がこける。
准一はその姿に思わず吹き出す。
健は意地の悪い笑顔を浮かべ剛を見下ろす。
「…ムカツク」
呟いたかと思うと、剛は健の携帯を奪っていた。
「ざけんなよ!」
携帯に向かって言う。
『剛?』
戸惑ったようなの声が返ってくる。
健と准一は剛の横で携帯から漏れるの言葉を聞いている。
「てめぇ、今日の何なんだよ?」
『え?』
「今日、お前のノリ、おかしかった」
責めるような剛の言葉。
『そうかな?久しぶりだから、いつもよりちょっと気合いは入ってたかもしれないけど』
は笑い飛ばそうとする。
「誰、見てた?」
『え?ずっと剛を見てたでしょ?』
剛が不機嫌なのは、誰の目にも明らかだった。
しかし、は平然と剛をあしらおうとする。
そのことが二人の関係を拗らせるのではないかと、健と准一は少し不安に思い始めていた。
「視線はな」
一言で会話が途切れる。
「なぁ、俺の先に誰を見てた?」
先程までと変わり、は急に静かになる。
『あの、ね』
「誰を見てた?」
間髪入れず剛が言う。
言い訳は聞きたくないらしい。
『…坂本くん』
の返事。
剛は固まる。
「はぁ?」
健が間の抜けた声をだす。
「なんでまーくんなん?」
准一は首を傾げる。
『あの、ね』
「何で坂本くんなんだよ!?」
ようやく反応する剛。
『話すから、ちゃんと聞いて!』
「…言えよ」
不機嫌そうに剛が言う。
『舞台、あったでしょ?』
「舞台?」
『坂本くんの』
「ああ」
『あれ、私、行きたかったの』
「は?」
剛はの言葉に一時停止する。
「なんか、それって関係なくない?」
健が言う。
「ちゃん??」
准一も言葉の真意が分からず疑問符を飛ばす。
「おめぇらうるせぇよ!!」
剛が健と准一から離れようとする。
しかし、二人も一緒に移動する。
剛は健と准一を睨んだ。
『でね』
電話の向こうからの声が聞こえると、三人は動きを止めた。
『一般でチケットとろうと思ったんだけど、電話繋がらなくて』
「…で?」
聞き返す剛。
『チケットとれなかったんだもん』
「だから?」
『行きたかったんだもん』
話が繰り返しはじめる。
「いいたいことがようわからんのやけど…?」
剛の隣で准一が洩らす。
「…わかった」
健が呟いて剛の手から携帯を抜く。
「ねぇ、ちゃんくやしかったんでしょ?で、その分今日ハジケた。っていうか、憂さ晴らし?違う?」
楽しそうに健が言う。
剛は健から携帯を奪い返す。
「…どうなんだよ?」
低い声で剛が聞く。
健と准一も剛に張りついての言葉を待つ。
『そぉだよ』
健が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「んだよ、それ」
剛が一言吐くと今度は准一に携帯をとられる。
「もしもしちゃん?准一やけど。剛くんに言えばチケットとれたんとちゃうん?」
『だって、剛、行っちゃダメって』
「なんでなん?」
健と准一は剛を見る。
剛は決まりが悪そうにしている。
『教えてくれない。でも、いつもだよ。自分が出るのしかチケットとってくれないんだよ』
剛は二人から離れようとしていた。
が、健に捕まる。
「なんでなんですか、森田さん」
剛は黙り込む。
「なんでなん?ちゃんかわいそうやん」
准一も問い掛ける。
「うっせぇ!」
逃げようとする剛を二人はしっかりと逃げないように掴んでいる。
『…剛?』
戸惑ったようなの声が聞こえてくる。
「言えよ」
健が剛に反論のできないような強さで命令する。
押し黙ったままの剛に健は携帯をもたせる。
「言え」
もう一度健が言う。
「嫌だから」
やっと剛が口を開く。
「は?」
准一が聞き返す。
「嫌なんだよ!が俺以外の男見るの!」
顔を赤くしながら一気に言った。
『ごぉ』
が剛の名前を呼ぶ。
『ありがと』
剛は何も言わずにいる。
ただ、その表情は先程までと違い、やわらかかった。
再び剛は健に携帯をとられる。
「よかったね、ちゃん」
『うん。ありがと、健くん』
は健に礼を言う。
「そうか、そうやったんやぁ」
やっと納得したように准一。
「でも、まーくんにまで嫉妬するん?まーくんは人の彼女に手ぇ出したりせぇへんと思うで?」
不思議そうに准一は剛に尋ねる。
「そうだよ、剛じゃないんだから」
健がからかう。
「てめ、ざけんなよ!」
剛が健の言葉にキレる。
「嫉妬深いんやね、剛くん」
准一が感心したように言う。
「んだよ?わりぃのかよ?」
剛は准一に掴み掛かる。
「ええと思うよ。ちゃんのこと愛しとるんやなって、ホンマに思うもん」
准一は笑顔で剛に言う。
「当たり前だろっ」
剛は准一を掴んだ腕を乱暴に離した。
「ちゃん、聞こえた!?」
健が手にした携帯に向かって興奮気味に言った。
『…うん。聞こえた。聞こえたよ』
の声が涙声になっていく。
『うれしいよぉ』
「泣くほど嬉しいの?」
健はに優しく言う。
『だって、剛、なかなか言葉にしてくれないから…』
「そっか。剛だもんね」
健が笑う。
「でも、よかったやん。剛くんの杞憂やったんやから」
准一が剛に笑いかける。
「うるせぇ」
剛は健から携帯を獲る。
「?あとでまた電話すっから」
『え?』
「いいか、俺の携帯以外からかかってきた電話絶対とるなよ」
剛は健と准一を見る。
「特にメンバーからかかってきたのはな!」
「え~っ」
「なんでなん!?」
健と准一が声をあげる。
「こいつら、あることないこと好き勝手にいいやがるからな」
『あはは。わかった。剛からの電話だけ待ってる』
の笑い声が三人の耳に届く。
「じゃあな」
『うん。後でね』
剛は携帯を切った。
健が剛に手を差し出す。
「何?」
「それ、俺の携帯」
健がにっこり笑う。
剛は携帯を健に返す。
「はい」
健はまた手を出す。
「何だよ」
剛が言う。
「通話料」
「はぁ!?」
「払ってよ」
「何でだよ!?」
剛と健が言い争う。
どうやら当分続きそうだ。
「俺、帰るね~」
准一は一人マイペースにその場を去っていった。
あとがき
BBチケットとれませんでしたね~。ごめんね、未央さん!!
しかもBBどころかカミコン終わってやっとUPです。
今度機会が有れば他のイベントに一緒に行きましょうね♪