理由
博の元気がない。
ここ何日か落ち込んだまんま。
理由を聞いても答えてくれない。
ひとこと、「たいしたことじゃないんだ」って。
力ない笑顔で返事された。
たいしたことないなら、何で元気ないままなの?
だけど、聞けなくて。
仕事のこととかだと、私何も言えないから。
だけど、このまま元気がないままなら、どうにかしなきゃって思う。
どうして、何も言ってくれないの?
確かに、私、非力だけど。
心配なの。
心配くらいくらいさせてよ?
これでも博の恋人なんだから。
「、なんか心配事?」
「え?」
突然、博が私の顔をのぞいた。
びっくりするじゃない。
「台本読み終わったの?早かったね」
分厚い台本を一生懸命読んでたでしょ?
「俺の出番、少ないから」
「そうなの?」
それはちょっとがっかりだ。
「って、話すり替えないでよ。何、考えてたの?」
うまくはぐらかせたと思ったのに、やっぱりこの人にはかないませんっ。
「大したことじゃないよ」
博のこと、考えてたなんて言えるわけないじゃない。
「うそつき」
一言。
視線が痛い。
そんな目で見ないでよ。
こわいよぅ。
「何、考えてたのかな?」
天使のような悪魔のほほ笑み。
逆らえない。
博のこの笑みに逆らえる人間なんて存在しない気がする。
「?」
わかったから!
言うから!
刺さるような視線向けないでよ!
「あの…ね」
「うん?」
未だ博はブラックエンジェルスマイル。
「博のこと」
みるみる博の顔から笑顔が消える。
視線の種類が変わったのが分かる。
少し、悲しそう?
「俺の、こと?」
「うん」
沈黙。
気まずい!
めちゃくちゃ気まずいよ!
「俺のこと、嫌いにでもなった?」
マジな視線で見つめられた。
「そんなことあるわけないじゃないっ」
博の言葉に焦る。
冗談でもそんなこと言わないでほしいのに。
「ホントに?」
なんで?
なんでそんなに疑ってるの?
「ホントだよ」
ホントだもん。
「じゃあ、何で?」
「だって、最近博の元気ないから」
「…え?」
軽く驚いた顔の博。
やっぱり私の気持ちなんて分かってなかったんだ。
「心配くらいしてもいいでしょ?」
私が同じこと聞いても答えてくれないんだから。
「?」
「博、最近元気がないでしょ?理由聞いても教えてくれないし。それとも、私は心配すらしちゃいけないの?」
あれ?
博、黙っちゃった。
ひょっとして、ヤバイ?
「ごめん、」
…え?
「俺、に心配かけてたんだ…。ごめんね。そんなつもり、なかったんだけど」
それは、分かってる。
博はいつでも我慢しちゃうんだもん。
「心配、かけてくれていいんだよ?」
「?」
「博のこと、何でも知りたいんだよ?全部、知りたいんだよ?」
「…」
「だけど、言葉にしてくれなきゃ分からないんだからね?」
博が、まっすぐ私を見てる。
だけど、急に柔らかい笑顔になって。
「ありがとう」
博は、私の頭をぽんぽんって叩いた。
「ありがとう、。俺、話さなくても、何でも伝わるんだって思ってた。事実、俺がどんな気持ち買って、大体。分かってたでしょ?」
私は少し、笑った。
「だって、愛してるもん」
「だけど、言葉にしなきゃ伝わらないことも有るよね。落ち込んでる理由言わなくて、ゴメン。余計心配にさせちゃったね」
優しい声で、博は言う。
「でもさ」
ちょっと表情が変わる。
照れてる?
「本当に、大した事じゃないんだよ」
博は、言いづらそうにしてる。
「ただ、たださ。俺が気に入ってたラーメン屋が一軒閉店しちゃったんだ」
ええと。
「それだけ?」
「…うん」
ラーメン屋が閉店?
この不況の世の中、よくある話だと思うのだけど。
「そんな顔しないでよ!」
博に言われた。
だって、呆れちゃうじゃない。
確かにグルメな博にとっては重大なことなんだろうけど。
でも、ソレが原因で散々思い悩んだのよ?
私は。
「ごめんね。にとってはさ、本当に「大したことじゃない」でしょ?」
まぁ、確かに。
「なんか、言えなくて」
う~ん。
この理由で落ち込んでるって私に言ってもどうにもならないだろうし。
第一、私にとって大したことない現実でしかないもん。
言いにくいかも知れない。
「でも、をこんなに心配させるくらいなら、言っておけばよかったね」
何か、事実を知ると自分がばからしい。
っていうか、恥ずかしい。
「何でも、に言うから。どんなにくだらないことでも言うから。が不安にならないように」
「…博」
嬉しいよ。
「俺、のこと、愛してるから。誰よりも幸せでいて欲しいから」
博…。
「ありがと」
私も、博が誰よりも幸せであって欲しい。
「博、愛してる」
あとがき
遅くなっちゃいましたが、みほりんさんへの、キリ番14000人目小説です。
すみません。ずるずるとこんな時期まで…。
つ、次頑張りますっ!(汗)