ダウト
どこで間違えたのか。
きっと、はじめから間違えていたんだ。
「なぁ、次の罰ゲームどうする?」
井ノ原が笑う。
「おまぇ、自分がババヌキ強いからって調子に乗ってんじゃねーぞ!?」
このところ連敗続きでパシリやら何やらさせられている坂本くんが喚く。
「普通の罰ゲーム飽きてきたよねー」
で、俺は追い打ちをかけてやる。
「長野っ!お前なんつーことを!!」
坂本くんが言い返すけど。
「確かに飽きてきたなぁ」
井ノ原は全く無視。(笑)
「ちょっと今までと違うことしたいよね」
「そうだ!」
井ノ原が何か思いついたらしい。
「デートは?」
「「はぁ?」」
思わず俺と坂本くんの声が重なる。
「ほら、好きでもねーやつと一日一緒にいるって嫌じゃねぇ?」
「まぁ、確かに」
そうかもしれない。
「よし、決定!ゲーム終わった時点でまだ教室に残ってる女子とデートな」
「なんだよそれ!?」
坂本くんが井ノ原を止めようとするが…。
「始めるよーっ」
聞く耳持たず。
井ノ原はカードを配り始める。
もちろん、それを止めるなんて事はしない。
こうなったからには勝利あるのみ。
なんで。
あれだけ坂本くんが負け続きだったのに。
俺が負けるだなんて。
最悪。
「さーて教室行くよ、教室♪」
ちくしょう。
井ノ原の奴、楽しそうにしやがって!
「でも、教室に女子が二人以上いたらどーすんだ?」
坂本くんが疑問を口にする。
「それは俺に選ぶ権利あるだろ!?」
主張する。
「そうだねー。でも、運良く教室に残ってるのは一人だけだよ」
井ノ原が教室の中をを覗きながら言う。
「長野、頑張ってこい」
坂本くんに肩をたたかれる。
「マジでやんの?」
「当たり前じゃん」
わかっちゃいるけど、拒否は出来ないわけね…。
「はい、いってらっしゃい」
坂本くんが教室のドアを勢いよく開き、井ノ原が俺の背中を押す。
ただ一人、教室に残っていた女子と目があう。
だ。
おとなしくて、寡黙で、一人でいることが多くて。
正直、暗い感じ。
どんな子なのか、いまいち分からない。
「長野くん?」
が俺を見てる。
「あのさ」
本当に誘わなければならないのだろうか。
しかし、同意して始めたからには罰ゲームは絶対。
それが俺達のルール。
まっすぐを見る。
不安げな視線が俺をとらえていた。
「今度、一緒に遊ばない?」
極力自然に言ったつもりだ。
「え?」
は不思議そうに俺を見る。
「だめ?」
ここで拒否してくれればいいのに。
「どうして?」
まさか、罰ゲームだなんて言えない。
「なんとなく」
そう答えるのが精一杯。
「いいよ」
「え?」
返ってきた答えに驚いた。
「いいの?」
あまりにも簡単な返事だったから、確認をしないではいられなかった。
「ダメなの?」
はやっぱり不思議そうな顔で俺を見ていた。
待ち合わせ場所には少し早く着いた。
だけど、俺より早くは来てた。
「長野くん」
声をかけられて初めて気づいたのだけれど。
俺は制服のしか見たことなかったから、そこにいるのがだと気づけなかった。
の着ている服はいたって普通。
派手でもなければ地味でもない。
なんていうか、清楚な感じ。
今まで気づかなかったけど、意外には可愛いかもしれない。
「じゃあ、いこうか」
「うん」
素直に返事した。
俺達の後ろを坂本くんと井ノ原がついてくるなんてこと彼女は知らない。
「長野くんっ!ペンギン!!」
なんとなくデート場所を水族館にしてみたのだけれど。
どうやら正解だったみたいだ。
は見た事もないくらいはじゃいでいる。
教室で席に着いているイメージしかなかった俺には新鮮だ。
「ペンギン、好きなの?」
「うん!だってペンギンって鳥なのよ?だけど水の中を泳げるなんてすごいじゃない!」
嬉しそうに俺に訴えてくる。
「そのかわり、空は飛べないのな」
俺の言った言葉に頬をふくらませる。
「でも、ダチョウとかニワトリも飛べないに等しいじゃない。だったら泳ぐって特技があるペンギンの方が絶対すごいもの」
ムキになって言い返すが可愛いと思えてしまう。
「そうだな」
俺が認めると満足げな笑顔になる。
やっぱり可愛いと思えてしまう。
ペンギンの水槽に張り付いているを見つめながら考える。
ずっと、単におとなしいだけのクラスメイトでしかなかった。
だけど、今日一日一緒にいるだけで、俺の知らなかったがたくさん見れて。
楽しそうに笑う。
ムキになって話す。
俺が思ってたとは全然違った。
よく喋るし、よく笑うし、すぐムキになる。
「ね、長野くん!イルカショーがあるんだって!見に行かない?」
ペンギンの水槽の横に案内板があった。
ちょうどあと5分で始まる回がある。
「いいよ。見ようか」
「わーい!じゃぁ、行こう?」
は俺の手を引いてイルカショーの会場へ行こうとする。
は気づいてないけど、手を握られたことで俺の顔が赤くなってしまった。
「ちょっと俺、トイレ行ってくる」
イルカショーの席をとって一言。
「あ、うん。帰ってきてね?」
「え?」
「ううん。つまんないからって先に帰られたら嫌だなぁって」
思わず笑う。
何を言ってるんだ、は。
不安そうに俺を見つけてる。
寂しがり屋なんだ?
また新しい一面を発見した。
「大丈夫。ちゃんと戻ってくるよ」
手を振って離れる。
トイレに行くなんて嘘だ。
本当は、坂本くんと井ノ原に会いに行くんだ。
俺は、ずっと彼女をだまし続けてる。
「って学校と全然キャラ違うよな」
井ノ原が嬉しそうに言う。
「おぉ。びっくりした。てっきりおとなしい子だと思ってたのに」
坂本くんが言う。
「そうだな」
俺もそう思うんだ。
だけど、それだけじゃなくて。
「あのさ、俺…」
言葉にしづらい。
「結構可愛いよな。いいよな、」
井ノ原の言葉に心が痛む。
「結構点数高いよな」
坂本くんが笑う。
この二人も、俺と同じなのだろうか。
の事…。
「どうした?長野。黙り込んで」
坂本くんの言葉にはっとする。
この気持ちは、言えない。
「いや、俺、をだましてるんだよなと思って」
そうだ。
だましてるんだ。
罰ゲームで彼女をデートに誘って、実は俺達の後ろを二人がつけてきていて。
のこと、何とも思っていなかったのに。
だけど、今は…。
「だましてるって…。確かにそうだけど」
「だからって、言うわけにもいかないだろ?」
坂本くんが俺を見る。
「分かってる」
分かってるんだ。
だけど…。
「ただいま」
席に戻るともうイルカショーが始まっていた。
「遅かったね」
少しはぶてたようにが言う。
「ごめんごめん。ちょっと混んでたんだ」
「そっか」
は納得したようで、視線をイルカに戻す。
俺の横で楽しそうにイルカショーを見てる。
が気になって仕方がない。
たった一日で変わってしまった。
もう、嘘はつけない。
「今日は楽しかった!ありがとう」
無邪気に笑う。
「うん。俺も楽しかったよ」
「じゃぁ、またね」
にっこり笑って、が背中を向ける。
「ゴメン」
「え?」
が振り返る。
「罰ゲームだったんだ」
「何が?」
無表情のが言う。
「教室に残ってる女の子をデートに誘うっていう罰ゲーム」
「そう」
の視線が痛い。
「ごめん」
の顔が、もう見れなかった。
「さよなら」
が俺から離れていく。
分かってた。
言ってしまえば、離れていくって。
だけど。
「俺、の事が好きになった。嘘じゃない。もう、嘘はつきたくないから」
俺の声は届いてるのか。
それとも、届いてないのか。
は振り返らない。
離れていく。
もしかしたら、もう二度と言葉も交わしてくれないかもしれない。
それでも。
もう、だましたくはなかった。
きっと、初めから、俺が間違っていたんだ。
あとがき
ずいぶん遅くなってしまいましたが、舞さんへの献上品です。
リクエストが学生のトニだったので、年齢差考えるとダブらなきゃいけない人が現れる溜め年齢一緒にしました。(死)
ご期待に添えたかは分かりませんが、たまたキリでも踏んで頂けると嬉しいです☆